短編
□僕の世界が壊れた
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「ふ、ら……ん……」
「なんですかー」
「あ、いして…る……」
「それは残念ですねー。ミーは愛してませーん」
こんな、残酷な言葉を吐き出したミーに、ふんわりと砂糖菓子みたいな笑みをくれた貴女。
それにも構わず彼女に刺さっているナイフをさらに奥深くまで刺し、ぐるりと一回転させると更に血が溢れて、彼女は綺麗な蜂蜜色の瞳を閉ざした。
世界の終わりが迫っている
ピ、ピ、と微かな機械音が鼓膜を震わせる。
それにあわせてドクドクと心臓が高鳴って、なんだか気分がよくない。
彼女が眠るベットに腰掛けて、彼女を見つめているスクアーロ作戦隊長の顔はなんだか何時もと違って弱弱しく見えた。
「スクアーロ作戦たいちょーそんなに辛いなら、彼女殺してあげましょーか?」
そう問えば鋭い眼差しをさらに強めて睨んでくる。
スクアーロ作戦たいちょーが見つめている彼女は、ついさっきミーがベルセンパイのナイフを使って意識不明に貶めましたー。
正直、べつに構わないじゃないですかー。何て思ってますー。
なんだか、皆に大切にされていて、でもミーは知らない。それがいらついたんですよー。
スクアーロ作戦たいちょーにそう言うと「死ね」と一言吐き捨てて出て行った。
なんとなーく、ベットに近寄って綺麗な顔を覗き込んでみる。
整ってるなーなんて思ってたら、なんだかふいに触れたくなって、本能のままに頬に唇をおとした。
なんの反応も示さない、細く華奢な体にまきついている包帯が痛々しい。
この人、知っている気がする。
そう感じたら生暖かいものが頬を伝って、触ってみるとそれは涙だということに気がついた。
あーミーは、この人のことを、愛してたんだ。
ひっく、ひっくとシャックリをあげながら泣くミーの姿は醜いでしょーねー。
暗殺者がいいザマだ。なんでもっと、はやくに気がつかなかったんだろう。
なんて幼稚な。ああ、醜い。なんで?
「死なないでくださいー」
はたはたと音をたてておちる涙に彼女は気がつかない。
貴女がいなきゃ、ミーは生きている意味ないんですよー。そう彼女に問いかけてみても、反応はない。
ピ、ピと機械音が小さくなっていく。
ああ、止まらないで、待って。
彼女の小さい手をつかんで泣き縋る。逝かないでくださいー。逝かないでくださいー。でも機械音はそれを無視して小さくなっていく。
僕の世界が壊れた
「逝かないでくださいー」
機械音が消えた。
ミーの世界は大きな音をたてて壊れていく。
嗚呼、なんて愚かな…