ウルフ(パラレル)

□神さま
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神さま@






あるポカポカ陽気で朗らかな日曜日ー。




街を見下ろす丘にはどんぐりの木があり、神さまがのんびりと昼寝をしていた。




訪れる人も少なくなり、、近所の婆ちゃんがたま〜に野の花を供えるくらい。



神さまは、それは昔は素晴らしい力を持っていたらしいが、失われて数百年は経つ。




そんな訳で、龍と遊ぶこともなく、人びとの足下に花嵐を巻き起こすこともなく、ほっこりとした昼寝を愛して、今日も時間は過ぎるはずだったのだ。





しかし









「なあなあ。あんた何してるん?」











「なあ。あんたやで、なあ。」



何かをうっとうしく呼ぶ声にイヤイヤ目を開ければ、目の前に人の顔があった。


「っ!!?」


「あ、起きた。一応生きてたみたいやな。」


黒髪の人間は、ふう、と息を吐くとつかんでいた神さまの襟を離した。


そう、黒髪の人間はあろうことか、神さまの首根っこを掴み、ぶんぶんと揺すっていたのである。



なんと無礼な。


神さまはイラっとした。しかし、ちらと見た人間が焦った様な表情をしていて、不可解さを感じて、じっと観察してしまう。

ん?



「見、えてる?」


「はあ!?おんどれ、頭大丈夫か?変な薬でもやっとるんちゃうやろな?」

黒髪の人間は、眉をこれでもかというほど寄せてうっさんくさ〜と神さまを詰った。



こいつー。




神さまは、今度は本気でムカッときた。いい気分で昼寝をしていた所を邪魔されたばかりか、この暴言の数々。神である自分が見える不可解さなど吹き飛んでしまう。



「なんや?」


あまりにじとっと睨みすぎたのか、黒髪の人間が、神さまの異変に気付く。 返事などしてやらない。


「てか、あんた変な服きてんなあ。」

ムッ

「なんか時代錯誤やん。」


ムムッ


神さまが着ていたのは着物で、確かに時代錯誤の代物だったかもしれないが、ただの着物ではない。
その昔、巨大な狐の化け物と知り合い、彼の毛で編んだ着物だ。例えば、凍れる湖の中でさえ、寒さなど感じはしない。

「寒そうやし、こんな時期にあんた阿呆?」
心底呆れた。という顔をされた。

阿ッーー。

「これ、貸したるわ。」


「は?」

「は?やのうて、あんがとさんやろ。」

黒髪の人間は、言いたいことを言って、着ていたダウンコートを脱ぐと、ぼふ!と神さまに無遠慮に被せた。


「わいもう帰るけど、また、来週来るし。そんとき返してえや。な。」


「、、、。」


神さまは驚きすぎて何も言えない。その間に黒髪の人間はさっさと踵を返すと歩きだしてしまった。


追いかけるという考えなど、微塵もない神さま。彼の上着から黒髪の人間の匂いと暖かさが伝わってくる。







「ど、、。」






どうしたらいいのだ!??



訳の分からない人間に対して、神様は呆然とするばかりだった。
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