ウルフ(パラレル)
□鳥と少年
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鳥と少年@
ピィピィ鳴くときは、エサが欲しいとき。
朝一番に、教室の後ろに位置する鳥かごに向かうことがウルフウッドの日課だった。
自分用の机から、椅子だけ持ってくる。鳥かごの前に陣取ると、あぐらをかいて、『とりのエサ』と書かれた缶をふる。
「ん〜、、まだ、あるな。」
缶の中身は、市販のエサなのだが、せこい、、、もとい、関西生まれのウルフウッドは、少しずつ使ってしまう。
教室には、朝の静かでひんやりした空気が広がっている。
この鳥が来てから、ウルフウッドは誰よりも早く登校している。
鳥にとって、朝日と共に起きることが、長生きの秘訣と聞いてから、毎朝、起こしに来ているのだ。
「まず、は、掃除やな。」
ウルフウッドは、小鳥を逃がさないように、避難用のゲージに移すと、丁寧に鳥かごの掃除を始めた。
一通り、鳥かごのなかをきれいにすると、今度は机の上に置いておいたビニール袋から、何かを取り出した。
教室にくる前に、校庭で採ってきたのだ。校庭のプランターで育てているタンポポだった。
普通、この鳥に与える青菜は、チンゲンサイや、ほうれん草なのだが、けち、、、もとい、倹約家のウルフウッドは、本で調べた結果、野草はいけないが、育てたものなら、タンポポやハコベでいいことを知り、育てているのだ。
ちなみに、プランターは、この学校の校長先生のものだ。
鳥がくるより前に、校庭で野球をしていたウルフウッドたちが、ホームランを決めたときに、ボールがプランターに落下し、校長先生の大切にしていた、牡丹の花を折ってしまったのだ。
それ以降、そのプランターに花が咲くことはなく、寂しげに校庭の隅に転がっていたものだ。
校長先生に対し、少し悪かったと思っているウルフウッドは、花のつくタンポポを育てているのだ。
昨日入れていた青菜は、すでにゴミ袋に入れている。
古いものは、病気になると言われたからだ。
新鮮なタンポポを皿に入れ、水も新しいものを用意する。
エサは控えめだが、見た目は多く見えるよう、ギリギリの量を入れておく。
ゲージから、鳥かごに鳥を移してやると、一声鳴くので、
「どういたしまして」
と、会話してみるのも、日課になっている。
ゴミを捨てて、教室に戻る。
少しずつ子供達が登校してきていた。