ウルフ(パラレル)
□神さま 閑話休題
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目が覚めたら、夕方になっていた。
ナイブズは、ちらりと窓の外をみて、明日は雨だな。とぼんやりと思った。
「おっ龍やん!明日は嵐やな」
ウルフウッドの言葉に唖然とする。
「見えてるのか?」
ナイブズは布団から、起き上がりウルフウッドに聞く。
「ん?龍のこと?見えとるよ。雨の遣いやね。寝癖ついとるやん。」
龍神は水の神だから、雨の遣いではないけどなあ。とか、中国から遊びに来たのかな。とか思う。
ここでナイブズはウルフウッドはやはり、色々見えているようだと確信した。
「よう寝とったやん。コーヒーいる?」
ウルフウッドはカップを持って近くまで来ると、ナイブズに片方のカップを手渡した。
「いつから?」
「ん?昔からやで。皆に見えるもんとはちゃうんよね。ナイブズは?見えてるんよね」
に。とカップに口をつけながら聞いてくる。逆の手がナイブズの頭にふれ、寝癖を撫で付けている。
「見える人初めてやわ。」
ウルフウッドは笑うが、まだナイブズが人智を超えた存在であるとは気付いていないようだった。
「にがっ」
カップに口を付けたナイブズが顔をしかめると、ぷぷぷ。とウルフウッドは笑う。それから砂糖を追加してくる。
分かっていて、なぜいつも苦いのだろう。
鈍い神さまは気付いていなかったが、ウルフウッドは公平で大人であった。小さい頃からすべてに優しくてよくモテた。
しかし、最近は好きな子を苛める楽しさに目覚め始めていたのだ。
「今日は泊まってく?」
「明日も手伝えということか?」
飲み終えたカップをキッチンまでもって行きながら聞くと、明日はええねん。と返事が返ってきた。
「大分片付いたし、明日はアルバイト探しや。」にやり。とウルフウッドは不敵に笑うので、ナイブズは、悪い奴みたいだ。と感じてしまう。
風呂あがりに、出されていたパジャマに着替えて出ていくと、ウルフウッドはすでに酒盛りの準備をしていた。
発泡酒ではない、ビールにウルフウッドより金銭に鈍い神さまは違和感を感じたりはしなかった。
ウルフウッドは人には言えないような事をたくさんしては、生活費を捻出していたが、自分の欲求には正直だった。
何故学生の寮とやらに、個室の風呂があるのか。寮なら共同風呂じゃないのかとか。まあ、神さまは鈍い上に世間知らずなので分かるわけはないのだが。
「酒?未成年。」
そこは気付くらしい。
「あはは。気付いてしもた〜?」
ウルフウッドはちびちびと日本酒を飲んで、ナイブズはビールとやらを飲んでいた。
まだまだ、春の夜長は続くようで、ナイブズはうっとりと龍のさ迷う空を見上げた。
終わり