拍手御礼SS


暗部待機室。

窓に向けて置かれたソファの端っこから、はみ出た肘と腕、その上に銀色頭を見つけた夕顔は
「カカシ、ちょっといいー?」と声をかけたことを後悔した。



ソファの前面に回り込む途中で見えたのは、
イチャパラ片手にででんと寝転ぶカカシとその足元にひれ伏すテンゾウの姿。


「何してるの、二人とも?!
・・・あっ、もしかして3年目の浮気がばれたとか!!それで開き直ってヨメに謝ってるとか!!」


よりによってまた古い歌が出てきたところで、テンゾウが顔をあげずに答える。

「違いますよ、夕顔さん!!僕が浮気なんかするワケないじゃないですか」


「いやお前、否定する場所が全然違う気がするんだけど・・・」


「あーっ!!動かないでくださいよ、先輩。いま角っこなんですから」

角っこ?

よく聞けば不規則に鳴るパチ、パチンという小さな音。

足元に広げられた新聞紙、その上で丸くなるテンゾウの背中には窓から入り込んだ春の日差しがさんさんと降り注いでいる。

そして膝にはカカシの真っ白な足の甲を置いて、手元には銀色の爪きりを握っていた。


なんで?!という夕顔の明らさまな反応にカカシが読書をやめて間髪いれず言い訳を始めた。


「言っとくけど自分で切れないわけじゃないし、別に切らせてるわけでもないからね?コイツが好きでやってるんだからね?」


「いや先輩が新聞紙も広げないで切ってるからですよ?爪があっちこっち飛び放題だし、それ刺さったら案外痛いの知ってます?

あと先輩すでに、巻き爪気味なんですから端っこの切り方気をつけないと・・・例えばココとかね」


テンゾウが爪きりの尖った部分を、カカシの親指の爪と皮膚の間に食い込ませた


「ぎゃっ 痛い、なにすんのテンゾウの馬鹿!」

がばっと起き上がり足を引っ込める大の男。


「ほらね。だから言ってるじゃないですか。先輩は一律丸く切りすぎなんですよ。

ボクの手の指は先輩のために深爪する勢いで切ってますk・・・」

ばちこーん。

余計なこといってんじゃないよと書かれたイチャパラではたかれた。


「けどテンちゃんの言うとおりだから気をつけたほうがいいわよ、カカシ。爪先に泥が入るのが嫌だからって切りすぎるのかもね・・・まぁ仲良くやってよ」


「あ、オレになんか用があったんじゃーないの?」


「あぁ、なんかお邪魔みたいだからいいわ。じゃーね」

夕顔はひらひら手を振って出て行ってしまった。


「思いっきり誤解されてるな・・・ぶつぶつ」


イチャパラで口元を覆い、もう一度ソファに身を沈める足元で
テンゾウはどや顔で爪のラインを調べ上げていた。


それから最期に足の指を広げ、間に自分の指を互い違いに差し込んで仕上げのヤスリをかけだす。


ゴリゴリ、ゴリ


「ひっ・・・///」


途端にカカシの全身に鳥肌が立ち、ゾゾゾゾゾと鼓膜の震える音とともにテンゾウの指から逃れようとした。



が、しっかり絡めとられて逃れられない。


「離、して!!」


異変を察知した足元の木遁男、太陽を浴びすぎて今まさに小さな嗜虐心が芽吹こうとしている。


「どうしたんですか、先輩」

なんて。

コリ、コリ、コーリコリ
さっきより、心持ソフトにこすってみる。


「ッあ・・・馬鹿、やめッ・・・///」



ゴーリゴリゴリゴーリゴリゴリ、ゴーリゴリゴリ


ちょっとアドリブを加えてみれば

「テンゾ・・・お願い」

爪先立ってびくびくと震える足首。


「もしかして、もしかすると先輩そういうことですか?」


(独白)
実はボクは前髪を人に切られるのが恥ずかしかったりする。

冷たいハサミがおでこに微かに触れる度、否、それを想像するだけで尾てい骨から頭まで電気が走ってしまうからだ。

びりびり、ぞくぞくするそれが性感帯なんだと幼いながらに勘付いていた。


同様にいまの先輩は指から爪の付け根からなにから、敏感になっているかもしれない。思わぬ性感帯の発見にボクは悦に浸る。


こんな美味しそうな先輩、もちろん逃がすわけなくて

感度の高まっているまあるい指先

あまくて ぷるんぷるんの果物にすら見えてきて

気付いたときには人目もはばからず、ぱっくんしていた。


「もう・・・やだ」

そしてボクはソファで身悶える先輩を・・・それはある春の日の出来事だった。



*
end

2011.3.21


先輩ったら、爪きり感じるらしいよ



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