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□君といる時間〜共愛〜
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8月11日。
そう、クラウドの23回目の誕生日だ。
ユフィはこの日、何故か朝から張り切っていた。
今日は仕事もなく、クラウドはリビングのソファに座り雑誌を読んでいる。
そして、ユフィはというと…。
ガシャーン!
「もー!何で上手くできないんだよー!」
さっきから、リビングと繋がっているキッチンで格闘中。
といってもモンスターがいるわけではなく、相手は食材。
いつもの料理はクラウドと2人で作っている為、ユフィ1人でというのは初めてだった。
…いつも2人で作っているが、クラウドに任せっきりだというのがよく分かる。
「さっきから何をやってるんだ」
「クラウドはあっち行ってて!あたし今真剣だから」
「…はいはい」
これで3回目。
様子を見に来たクラウドは、キッチンに一歩入った途端にユフィに追い出された。
クラウドは、当たり前だが今日が自分の誕生日だという事を忘れている。
…興味がない、というのが正しいのか。
その事を当然分かっているユフィは、1人で豪華な料理を作ってクラウドを喜ばせたい、と思って朝から…いや、数日前から張り切っていたのだ。
「えーっと、確かここに…」
背伸びをして、上の棚から何かを探しているユフィ。
クラウドはそんなユフィを見兼ねて立ち上がり、キッチンに入る手前で彼女に話しかけた。
「取ろうか?」
「だいじょーぶ」
ユフィは椅子を移動させ、その上に乗ると棚から白い粉が入った入れ物を取り出した。
「あった、砂糖」
「砂糖…?」
ユフィが手に持っている物を見てクラウドはキッチンに入る。
「あ、クラウドは入ってくんなってば!」
「…砂糖じゃないけど」
「へ?」
「それ、塩」
「え、嘘!?」
蓋を開けて粉を指に付け、ぺろりと舐める。
途端に顔を歪めたユフィは『ホントだ』と言い、それを棚に戻した。
そして、他の容器を手に取った。
「これは?」
「…小麦粉」
「じゃあこれ」
「……片栗粉」
「ならこれだ!」
「……お前、探す気あるのか?」
はぁ、と溜め息をつきながらクラウドは棚へ手を伸ばし、正真正銘の砂糖を取り出しユフィに渡す。
「…………うー…」
「で、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」
「何を?」
「キッチンをこんなに壊滅的にしながら料理を作る理由」
2人してキッチンを見渡せば、鍋やフライパンが黒焦げになっていたり、皿が2枚程割れていたり。
「…怪我までして…」
「え…っ、やっ…」
ユフィが椅子から降りた時、クラウドに手を掴まれ怪我をしている指先を舐められた。
ユフィは思わず声を上げてしまい、すっと手を引っ込める。
「こ、こんなの…かすり傷、だし…」
「…感じた?」