□君といる時間〜現存〜
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結局。

夕方近くになり、クラウドはエッジの街中へ来ていた。
もちろん、ユフィを抱いたまま。

街で行き交う人の視線が痛い。

何故ここへ来たかというと。

クラウドは家にいてもたってもいられず、結局あの怪しい薬売りを探しに来たのだ。

「…やっぱり、いないな…」

どこを探してもあの男はいない。

クラウドは広場に着きベンチに座り、ユフィを下ろす。

ユフィは子供も遊べる噴水の所へ走って行き、楽しそうに水遊びを始めた。

目を細めてユフィを見つめる。

クラウドは、子供は好きだが接するのは苦手だ。

でも…今のユフィに対しては違う。

『ユフィだから』。

『ユフィだから』愛しいのかもしれない。

そんな風に感じる自分に対してふ、と笑ってしまう。

「ぱぱー!」

呼ばれる声に気付き、はっとして噴水に目をやる。

「ユフィ?」

噴水で遊んでいるはずのユフィがいない。

クラウドは慌てて立ち上がり、ユフィがいたはずの場所へと走る。

何回見渡しても、ユフィの姿は見えなかった。

「どこへ行ったんだ…」

クラウドは少しでも目を離した事を酷く後悔した。
ぎり、と拳を握り締め、ユフィを捜しに走ろうとした時。

「ぱぱ!」

「っ?」

突然後ろから聞こえた声に振り向けば、足元にはユフィ。

「ユフィ…っ」

ユフィを抱き上げ、強く抱き締めた。

…駄目だ。

ユフィがいないだけでおかしくなりそうだった。
そう考えるだけで、怖いと思った。

「ぱぱ?」

心配そうにクラウドの顔を覗き込むユフィ。

クラウドは不安にさせないように笑いながらユフィの頭を撫で、再びベンチに座った。

(帰るか…)

元には戻らないかもしれない。

でも、この子はユフィには違いないのだ。

もし戻らなくても…。

このままでいい、と思ってしまう。

『ユフィ』が傍にいてくれるのなら。

…ゴドーはどんな反応をするか分からないが。


クラウドは立ち上がり、ユフィと手を繋ぎながらアパートへの道を歩き始めた。
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