□君といる時間〜本音〜
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(あたし…何やってんだろ…)

はぁ、と溜め息をつく。

ユフィのいる場所は、ユウキが『待ってる』と言っていた橋の上。

こんなはずじゃなかったのに。

2人で手を繋いで、屋台を回って、花火を見て…。
普通の事がしたかっただけなのに。

それに、今日は。

(1年、なんだよ…)

そう。
今日はクラウドとユフィが付き合って丁度1年なのだ。

ユフィはこの日の為にプレゼントも買っておいた。

「クラウド…」

橋に肘をつき、俯いて逢いたい人の名前を呼ぶ。

傍にいないのに…。

すると、パッと明かりがユフィの目に映った。

屋台の電気が一斉に付き、祭りが始まった合図だ。

…余計に切なくなる。

その時だった。

コツ…。

背後から靴音が聞こえると、ユフィはハッとして振り返った。

「クラウドっ…」

「ユフィ、来てくれたのか!」

「ユウ、キ…か…」

深く溜め息をつき、ユウキに背を向ける。

そして、左手の薬指に嵌めている指輪にそっと触れ、キスをした。

(クラウド…っ…傍にいてよ…いつもみたいに抱き締めてよ…)

「ふっ…ぅ…」

何故、怒って勝手に飛び出してきてしまったのだろう。

クラウドなら、しっかりと分かってくれるはずなのに…。

(分かってなかったのは、あたしの方だ…)

自分の揺らいだ感情のせいでクラウドをまた不安にさせて。

そう思うと、また涙が止まらなくなった。

「ユフィ…」

「っ、ユウ…」

突然、ユウキに後ろから抱き締められた。

ユフィは何故か動けなくなった。

「好きだ…」

「………」

「昔からずっと…ずっと、好きなんだよ。お前が旅立った時だって、気が気じゃなかった。なぁ、何で突然現れたアイツなんかと一緒にいるんだよ…俺とずっと一緒にいてくれよ…。俺だったら、ユフィをこんな風に泣かせたりなんかしない」

「ユウキ…」

あぁ…この人に縋れたら、どんなに楽だろう…。

(でも、あたしは…)

ユフィはユウキに向き直ると、両手で胸板を押して少し離れ、軽く頭を下げた。

「ごめん…ユウキ。あたし、クラウドじゃなきゃ駄目なんだ。クラウドが傍にいないと、息もできなくなる…」

「…………」

ユウキの言葉がない。

ユフィはゆっくりと顔を上げ、ユウキの表情を伺った。
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