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□君といる時間〜自我〜
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夏祭り会場までの道程を歩く。
クラウドはふと周りに目をやると、若い女性達が同じような物を身に付けている事に気付いた。
「クラウド、どしたの?」
「いや…あれは?」
クラウドが指差したのは、黒髪を纏め上げた綺麗な女性。
ユフィはムッとしてクラウドの頬を抓った。
「ふーん…やっぱりあーゆー綺麗な人がいいんだ」
「っ…何訳の分からない事を言っているんだ」
「だって…」
「俺は着ている服の事を言ってるんだ」
「服?」
ユフィが再び女性の方を向けば、綺麗に整った浴衣を着ている事に気付いた。
「あ、浴衣の事?」
「浴衣?」
「うん、ウータイに昔からあるやつなんだけどさ、夏にイベントとかあると結構着る人がいるんだよ…って、クラウド知らないの?」
「あぁ」
そーだよね、ウータイの服だからね…。
「お前は着ないのか?」
「え、あたし!?」
「嫌なのか?」
嫌、っていうか…。
ユフィは今まで浴衣を着た事はなかった。
あんな動きにくく締め付けられるようなのは着たくなかったし、何より自分には似合わないと思っていた。
「似合うと思うけど」
浴衣を着ない理由を聞いたクラウドが小さく言うと、ユフィは思わず顔を凝視した。
「む、無理だって!あんなの!」
「大丈夫だ。ほら、借りに行くぞ」
「やーだー!!」
ユフィの抵抗も虚しく、クラウドに強引に浴衣をレンタルしている店へ連れて行かれる事になったのだった。
店に入ると、たくさんの浴衣が並べられていた。
「ユフィ、折角なら、レンタルじゃなく買った方がよくないか?」
「え、何で?」
「これから毎年必要になるだろう」
「それって…」
(毎年あたしと一緒にいてくれるって事?)
言葉には出さなかったが、クラウドはそれを感じとったのかユフィを見て軽くふ、と笑う。
ユフィはへへ、と照れ臭そうに笑うと、クラウドの腕にそっと自分の腕を絡めた。
2人はレンタル店と隣接している店へ入り、何がいいか探し始める。
「あ」
ユフィは一つの浴衣を見付け、それを手に取った。
紺色をベースに、濃いピンク色の花柄の浴衣。
(…あたしには可愛すぎるかな)
溜め息をつきながらそれを元に戻そうとすると、その手をクラウドに止められた。
「いいんじゃないか?」
「ホントに?」
「あぁ」