□君といる時間〜敬愛〜
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夏祭り会場に着いた2人は、まずその人の多さに圧倒された。

どこを見ても人、人、人。

目眩がしそうなくらいだ。

そして、やはり多かったのはカップルだった。

仲良さげに手を繋ぎ、男性が女性をリードしている姿が多く見受けられる。

(いいなぁ…)

ユフィが周りのカップルを羨ましいと思っている間、クラウドは人の多さに若干呆れていた。

「すごい人だな」

実は、ユフィもこの夏祭りに来たのは何年かぶりだった。

いつの間にかウータイの夏祭りが有名になったらしく、近年各地から観光客が来るようになっていたのだ。

「ほら」

「へ?」

クラウドがそっと手を差し延べる。

ユフィはクラウドの顔と差し出された手を交互に見た。

(なんか、緊張する…)

「嫌なのか?」

「そ、そんなわけないじゃん」

手を繋いで屋台を回る。

夢にまで見た事だった。

だが、いざとなると何故か恥ずかしくなる…。

ユフィがそっと触れると、大きな手が彼女の手を柔らかく包み込むように握った。

(クラウド…)

「はぐれるなよ。こんなに人が多いんじゃ携帯も繋がらない」

「わ、分かってるよー」

ただでさえ歩きにくい恰好をしているのだ。

はぐれたりしたらクラウドに迷惑をかけてしまう。

しっかりと手を握り、屋台に囲まれながら歩き始めた。

「見た事のない食べ物ばかりだな…」

屋台は焼きそば、お好み焼き、たこ焼き、かき氷など、ウータイにしかない食べ物が数多く並んでいた。

「あ、クラウド!あたしこれ食べたい!」

立ち止まり、ユフィが指差したのはりんご飴。

「好きなのか?」

「うん、昔から好きなんだー。甘酸っぱくて美味しいんだよ」

「へぇ…」

屋台の主に200ギルを渡して真っ赤なりんご飴を受け取る。

歩きながらりんご飴を舐めるユフィは、何というか…。

…誘っているみたいだった。

言葉に出しては言わないが。

「ユフィ」

「んー?」

「旨いのか?」

「ん?うん」

「なら、俺も」

「うん…って、ちょっと…!」

りんご飴を舐めているユフィに顔を近付けると、クラウドはそのまま彼女と一緒に飴を舐めた。

さすがにユフィも驚き、思わず一歩後退った。

「旨そうだったからな」

…お前が。

そんな考えは心の中に溜め、りんご飴と同じくらい真っ赤な顔のユフィに向かってふ、と軽く笑う。
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