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□A New DayN
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―――そりゃ、あたしが気に掛けなかったのが駄目なのかもしんないけどさ。
でも、それでも…。
「………おい…」
「…………」
昼休み。
屋上で座りながら弁当を食べているが、クラウドはいつもと空気が違う事にすぐに気付いた。
先程からいくら声を掛けても返事をしないユフィ。
弁当を渡す時だって無言で、誰が見ても分かる程不機嫌だ。
クラウドは呆れたようにはぁ、と溜め息をつくと、一旦箸を置いた。
そして、ユフィの腕を掴んで引っ張り彼女が自分の胸に背を預けるようにして座らせ、そっと優しく抱き締める。
「言わないと分からないだろう」
「………ん…」
「え?」
「……ごめ、ん…」
消えそうな声で言葉を紡ぐ。
それを何とか聞き取ったクラウドは、謝る意味が分からず横から彼女の顔を覗き込んだ。
そのユフィの表情は、今にも泣きそうで…。
「何があったんだ?」
「…誕生日、知らなくて…」
『誕生日』という言葉に、クラウドはすぐに今朝の女生徒との会話を思い出した。
「あぁ…」
あの時のユフィの驚きの声は、自分の誕生日を知っての事だったのか、とようやく納得する。
ユフィの事だ。
何も出来なかった自分を責め、気分が落ち込んでいるのだろう。
「俺は別に誕生日なんて気にしてない。それに、お前は大会で忙しかったんだから仕方ないだろう」
そう、8月11日は大事な大会の真っ只中だった。
だが、ユフィとしては大切な恋人の誕生日を祝いたかったのだ。
「あと、ティファに言われた…」
「何を?」
「あたし達の事、誰にも知られちゃ駄目だって。ちゃんと自覚しないとって…」
「まぁ、そうだな…」
2人の事がもし他の教師にバレてしまえば、クラウドは間違いなく何かしら処分を受けるだろう。
さすがにそれはいけない、とユフィ自身も分かってはいるのだが、何分、何もかもが初めての恋愛。
冷静な判断など出来るわけがなかった。
「…ユフィ」
呼ばれ、横を向くと不意にちゅ、と触れるだけの口付けをされる。
「クラウド…?」
「俺は、お前がいてくれればそれだけでいいんだ。誕生日なんかもう忘れろ」
「でも…っ!」
ユフィが反論しようと後ろを向くと、すぐさま正面から強く抱き締めた。