□君といる時間〜受難〜
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クラウドの声にびくっと肩を震わせてしまう。

ユフィはニッと笑みを向けた。

「ごめん。さ、宿屋行こ!」

「…………」

先に宿屋へ入っていくユフィの背中を、クラウドは後ろから見つめ続けた…。




チェックインを終え、2階の一室に入る。

「ねぇクラウド、夕方までどうしよっか……っ!クラ…っ…」

荷物を床に置いた瞬間だった。バン!と両手首を壁に押さえ付けられ、クラウドに迫られる。

「クラウ…ド…?…っ、ん…何、して…!」

「…何、って…分からないのか?いつもしている事なのに」

彼女の耳に口を寄せ、そのまま甘噛みする。
そして、片手でユフィの胸を服の上から触れようとした時、その手を彼女に掴まれた。

「何、考えてんの…っ」

ユフィがクラウドの瞳を見た瞬間。

ユフィは息を飲んだ。

何も映していないような…冷たい、クラウドの瞳。

「クラウド…?」

「…本当は、アイツと行きたいんじゃないのか…?」

「え…何、言って…」

「夏祭り」

「え…」

一体、クラウドは何を言っているのか。何が言いたいのか。

ユフィには全く分からなかった。

「クラウド…何でそんな事言うんだよ…」

「…………」

「あたし、何かした?」

クラウドは冷たい瞳のままだ。

だが、ユフィと視線を合わせようとはしなかった。

「さっき、満更でもなさそうだっただろう。本当は、アイツの事が好きなんじゃないのか…」

「っ!!」

頭に血が上る。

抑え切れなかった。

ユフィはカッとなり、クラウドの頬を思い切りひっぱたいた。

バチン!と大きな音が部屋に響き、ユフィはボロボロと涙を溢れさせた。

涙は、止まらない…。

「あたしの事、一番に分かってくれてるの…クラウドだと信じてた。…なのに…っ!もういい!ユウキと一緒に行ってくる!」

両手でクラウドの胸板を力を入れて押すと、ユフィは走りながら部屋を出て行った。



「全く…何をしているんだ、俺は…」

クラウドの溜め息は、静かな部屋に寂しく残った…。





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