□A New DayA
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(心臓に悪い…)

「お前、立入禁止なのに入ってきたのか?」

「アンタだって」

「センセイ、だからな」

「えー、何ソレ」

ぷっ、と吹いて笑ってしまう。

ユフィはこの和やかな空気を壊したくないと思った。

笑い終えると、ユフィはクラウドがスポーツドリンクの缶しか持っていない事に気付く。

「ねぇ、ご飯食べたの?」

「いや、食べないんだ」

「何で」

「面倒だからな」

「ふーん…」

購買で買う事もしないらしい。

食べないのに、この鍛えられた体格。

ユフィは何かを思い付き、『そうだ』とクラウドに向き直る。

「ねぇ、ツンツン頭」

「何だ、それは…」

「いーじゃん、ツンツンしてんだし。…弁当、あたしが作ってくるよ」

「そこまでしなくても…」

「この暑いのに食べなきゃ倒れるって。あたし、こう見えても料理は得意なんだ」

「へぇ…」

幼くして母親を亡くしたユフィ。

物心がついた時には既に父親であるゴドーの手伝いをしていた。

そして、最近では仕事が忙しい父親に代わりユフィが家事全般を任されている。

「朝練もあるし大変なんだろう、大丈夫なのか?」

「親父と自分の分も作ってるんだ、今更一つ作るぐらいで変わんないって」

「そうか…なら、頼む」

「じゃあ、明日の昼またここに来るから!」

笑顔で言うと、予鈴が鳴った。

ユフィは自分のスポーツドリンクを手に取ると教室に戻ろうとドアノブに手を掛ける。

「っ、え…」

ドアノブを握っていない方の手を引かれ、ユフィはクラウドを凝視した。

「礼を言っていなかった。サンキュ」

「っ…べ、別に!」

慌てて手を解き、ユフィは勢い良く屋上を後にした。

手摺りに捕まりながら階段を降りる。

(び…びっくり、した…)

あんな綺麗な笑顔でお礼を言うものだから。

心の準備なんて出来ていなくて。

心臓だって、飛び出そうなくらいウルサイ。

「もー!何なんだよ、これー!」

この気持ちを知らないユフィは、これから大いに悩む事になるのだった。




「ユフィ・キサラギ、か」

屋上に残ったクラウド。

ふ、と笑いながらスポーツドリンクを飲んで眩しい程の空を見上げた。





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