□A New DayC
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「あ、ありえない…」

1on1を始めて10分。

何回やっても、クラウドは抜けなかった。

ユフィはその場に座り込み、息を荒げた。

「アンタ、バスケ部だったの?」

「いや、そういう訳じゃないが…色々な部活から呼ばれていたな」

「いわゆる…助っ人?」

「まぁ、そんなとこだ」

一人で何回もシュートをしながら答えるクラウド。

ゴールを外す事なく、しかも息一つ乱れていない。

「アンタ…苦手な事ってあんの?」

「…………」

ユフィの言葉にクラウドは一瞬止まるが、すぐにゴールへボールを放った。

…初めてシュートを外した瞬間だった。

「ごめん、何でもない」

2人の間に沈黙が流れる。

「あのさ…」

ユフィが口を開いた瞬間、外から生徒達の声が聞こえた。

もうすぐ7時になろうとしていた。

クラウドはボールをカゴへ戻し、ユフィに近付く。

「じゃ、頑張れよ」

ふわ、と微笑み、ユフィの頭をぽんぽんと叩いた。

そして、体育館を後にしようと扉へ歩いていく。

「っ、絶対いつか抜かしてやるからなー!」

「はいはい、待ってるよ」

ひらひらと後ろ向きで手を振り、クラウドは体育館を出て行った。

(……あんな顔、するんだ)

クラウドがふと見せた、少し、切ない表情。

それが、ユフィの頭から暫く離れる事はなかった。


















昼休み。

ユフィはティファに『ごめん!』と謝り、弁当を2つ持って屋上へと向かった。

屋上の扉の前まで来ると、ユフィはいつものジュースを買うのを忘れた事に気付く。

(…ま、いっか)

ガチャ、とドアノブを回して屋上に出る。

「わっ…」

屋上に出た瞬間、冷たい缶がユフィに投げられた。

…いつもの、スポーツドリンク。

ユフィは弁当を落とさないように缶を受け取ると、すぐに視界に入った人物に近寄る。

「危ないなー」

「先に言う事は?」

「…アリガト」

言いながら、クラウドの隣に座る。

『ほい』と言い弁当を渡すと、クラウドは礼を言うと袋の紐を解き始めた。

ユフィはその様子を真剣に見つめる。

その視線に気付いたクラウド。

一度手を止め、ユフィを見遣る。

「…どうした?」

「え、あ…べ、別に…」

ふいっと視線を逸らすが、やはり気になって。

他人に食べてもらうなんて、初めてで。

相手がこの教師だから、余計そうなのかもしれない。
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