□好敵手(※)
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ユフィを見遣れば、彼女は目を細めて幼いクラウドを見つめている。

「…………」

何故かは分からないが、面白くない。

「ねぇ、どうしよっか」

「どうすると言われても…」

2人が考えていると、クラウド(小)がユフィの服をきゅ、と掴んで軽く引っ張った。

「ん?どしたの?」

「お姉ちゃんと、一緒がいい」

上目遣いで、ユフィを見つめるものだから。

当のユフィは…

「じゃ、一緒にいよっか!」

あまりの可愛さに、幼いクラウドをぎゅっと抱き締める。

(これは、俺なんだよな…)

小さいとはいえ、自分が無邪気にユフィに抱き付いていると思うと…

(変な感じだ…)

はぁ、と溜め息をつくと、幼い自分に見つめられている事に気付き、目を合わせれば。

「な…っ」

自分(小)がこちらを向いてべーっと舌を出したのだ。

いわゆる…挑戦状。

お姉ちゃんは僕のもの、という。

相手は子供で、しかも…自分だ。

嫉妬なんてするはずがない、と思っていたのに…。







「あはは!くすぐったいってば!」

あれから2時間、ユフィとクラウド(小)はソファの上でずっとくっついていた。

時折ユフィの脇腹を触ったりすると、彼女は嬉しそうに笑顔になる。

「…………」

ユフィが笑顔なのは嬉しいが、何故かイライラする。

(嫉妬…?)

キッチンの椅子に座り、雑誌を読みながらそんな事を思うクラウド。

嫉妬なんてしない、と思っていたのに、自分の心の狭さに溜め息をついてしまう。

相手が自分だから、余計に…?

…いや、違う。

相手が誰でも、ユフィの傍にいてほしくない。

(まさか自分がこんなに…)

彼女に溺れていた、なんて。

「あ、そうだ」

ユフィの声が聞こえ、そちらに視線を移す。

「あたしと一緒に、お風呂入ろっか」

「うん!」

「は!?」

思わず声を上げ2人を凝視すると、ユフィは風呂に入る為の支度をする為、リビングを出ていった。

自分と一緒に風呂なんて、滅多に入ってくれないのに…

羨ましい…

(っ、何を考えているんだ、俺は…)

今日何度目か分からない溜め息をつけば、いつの間にか目の前には小さな自分が立ってこちらを見つめていた。

「ど…どうした?」

「お兄ちゃんって、大きくなった僕だよね?」

「お前…知って…」

すると、ニコッと満面の笑みを向けられた。

「じゃ、僕がお姉ちゃん貰ってもいいって事だよね?」

「いや、それは…」

その時、脱衣所からユフィがクラウド(小)を呼ぶ声が聞こえ、「はーい!」と言って走っていってしまった。

クラウドは2人がいなくなったリビングのソファに座り、リモコンを手に取ってテレビを付けた。

別に、見たい番組があるわけでもない。

ただ、余計な事を考えたくないだけだった。
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