リクエスト小説

□信じる思い
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だが、ガイが口にした言葉や、抱いた思いがアッシュを傷つけたという事は確かだと感じる。



――俺は、ルークとアッシュの両方を裏切って傷つけたんだな



自らを蔑むように、そう思う。



復讐という刃を隠し、表面上の穏やかな笑顔で接していた。



自分の正体を知られた時は、恐怖と安堵がない交ぜになった感情をもてあました。



ルークが向ける信頼と、アッシュが向ける幼なじみという名の親しみを覆してしまったのは、ガイ自身の咎だとしか言い様がない。



それを改めて思いながら、深くため息をつき寝返りを打つ。





悲愴な決意と共に、再び王位継承者の地位についた赤髪の青年の後ろ姿を、改めて、哀しいと思った。











「ルーク、本当にもう大丈夫なんですか?」



更に数日が過ぎた頃。



ルークが突如激しい頭痛に見舞われたと思うと、次に目を覚ました時には一度失っていた筈の記憶を全て取り戻していた。


呆気なく解決した、と言えばそれまでたが、元々一過性のものであり、記憶の混乱の収拾がついたと思えば何とはなしに納得できた。



代わりに、ルークは記憶を失くしていた時期の事を一切忘れてしまった。


これもまた、症状の一環だと医者から説明を受けた。




記憶を取り戻した事が良かったのか否かはルーク自身にしか分からない。


だが、目の前のルークは心配そうに尋ねるエステルに微笑みかけると頷いて答えた。



「平気だって。もう頭は痛くないし、記憶喪失…ってやつも落ち着いたってさっき医者の人も言ってただろ?」



「でも、無理しちゃいけないよ。まだ休んでた方が良いと思うな。」


カロルの意見に、困ったように笑みを浮かべるルークに内心苦笑する。


きっと本人は、今すぐにでも外で羽を伸ばしたいのだろう。


何せ、記憶喪失の時から今に至るまでろくに遊べなかったのだから、いい加減自由に動き回りたいのだ。





「カロルの言う通りね。ルークは無茶が多いのだし、休養という事で、もうしばらくゆっくりした方が良いと思うわ。」



そわそわするルークに小さく笑いかけながら、やんわりとジュディスが釘を指すように言う。




「あたしも賛成。あんた寝ときなさいよ。またぶっ倒れても知らないわよ。」



「うっ…………」




リタの容赦ない言葉に、肩を落としながらルークが残念そうにため息をついた。




「ま、そういう事でルークは暫く休めよ。色々退屈なのは分かるけどさ。」



しょんぼりとするルークの頭を撫でながら、ユーリは言い聞かせるように言った。
それに、渋々ながらも頷きが返される。




「では、午前中に買い物などを済ませて早めに帰って来ましょうか。」



ルークを長く一人にはさせまいと、エステルが提案をする。


それに皆賛成の意を示した。



「ガイ、試作品の武醒魔導器をメンテナンスするから、ちょっと貸して。」



リタが歩み寄りながら、ガイのチョーカーに取り付けた、エアル変換率を抑えた試作品の武醒魔導器に視線を注ぐ。



それに頷くと、ガイはチョーカーを外してリタにそれを渡した。




「俺また留守番かよー。」



「帰って来たらケーキ作ってやるから、そう拗ねるなよ。」



「マジっ!?」



ユーリの鶴の一声にあっさりと陥落されたのか、ルークはきらきらと顔を輝かせながら期待に満ちた目で彼を見上げる。
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