小説 2

□募る想いの告白
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フレンからの緊急の知らせを受け、ユーリが仲間達と共にヒピオニア大陸へ戻って来たのは、あれから三日が過ぎた後だった。


ユニオン本部や戦士の殿堂には話をつけ、彼らの日程を調整次第、共にヒピオニア大陸に向かうという旨でまとまったところ――あのような手紙が届いたのだから、揃いも揃って愕然とした。


ノードポリカに足を運んだ最中に飛び込んできた、急を要する事態に対し、ユーリはまず戦士の殿堂に説明をした上で彼らに一時待機を要請した。


幸い、今までの交流である程度の信頼を築けていたのか、大きな不満を聴くような事もなく……寧ろ憂慮してくれた彼らは幾つかの物資の提供に加え、ユニオン本部への説明について自ら買って出てくれた。


仲間内のレイヴンも、ヒピオニア大陸に戻る準備の最中にハリーへ手紙をしたため、ユーリ達は忙しない足取りでノードポリカを後にした。







「――フレン!!」








日が沈み、辺りが闇に覆われる中、砦の出入り口の前でユーリ達の到着を待つフレンの姿を目にするなり、声を張り上げて彼の名を呼んだ。
途端、強張った表情でフレンが顔を向ける。







「ユーリ!……急な呼び出しをしてすまない。エステリーゼ様も、お忙しいところを振り回してしまって……」





「そんな、気にしないでください。それよりガイは何処にいるんです?」







申し訳なさそうに目を伏せるフレンに、エステルが毅然とした態度で問いを口にすると、彼は直ぐさま表情を引き締めて先を促してきた。


彼の案内に続いて、ユーリ達は砦内部に足を踏み入れる。



中は、当初とは比べ物にならないほど様々な建築物がそびえ立つ、小さな街とも呼べる光景にまで出来上がっていた。

まだ造りかけのものも目立つが、生活環境としての機能が備わり始める兆しが感じられる。


最も、今はのんびり鑑賞に耽る余裕は無い為、一同は感嘆の息もそこそこに、前方を歩くフレンの背中に追従する形でガイの下に向かった。



木材で造られた、簡素でこじんまりとした建物を前に、ようやくフレンの足が止まる。右手で扉を押す彼の背中へ向かい、エステルがガイの容態について尋ねれば、固い声が返ってきた。







「……正直言って、芳しくありません。いえ、負傷者の中では一番容態が不安定です。治癒術で傷を癒せない事が災いして、悪化の一途を辿っています。」







ガイの現状について簡潔に説明するフレンの言葉に、エステルとカロル、リタはショックを露にし、ユーリとジュディス、レイヴンは表情を更に強ばらせた。



皆の消沈した様子に、フレンは緊張した面持ちのまま、ユーリの足元で大人しくしているラピードの頭を撫で、今しばらく扉の傍で待機するよう言い聞かせた。


重傷者が運び込まれている施設内に、動物を安易に入室させるわけにもいかない状況をどれだけ察したのかは分からないが、ラピードはフレンの言葉に小さく一吠えすると、言われた通りに扉の近くで腰を下ろす。



聞き分けの良い、彼の様子にフレンも僅かに目元を和らげたが、再び厳しい顔つきに戻ると開きかけた扉を全開してユーリ達を招き入れた。
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