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268件のレスが見つかりました
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投稿者 親記事
[記事No.326462]短編小説

まなか
ID:[shiroikotori]
PC
投稿日時:04/03 19:27

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 ま、間違って短編小説スレッドを削除してしまいました……!!
 本当に本当に申し訳ない。消してしまった作品の作者様にお詫び申し上げます。

 また作りますので、また投稿していただけると嬉しいです。すみませんでした。

 一つのレスに収まる長さの短編小説を書きましょう。
 投稿は何度でも大歓迎です。連続投稿も可能。気が向いた時に参加してください。
 スレ主も頻繁に出現します。

投稿者 スレッド
[記事No.622431]Re:短編小説

天p抜刀d竜
 gvMql5p6
ID:[gintama9524]
PC
投稿日時:03/16 23:27

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記事No.326462への返信
その昔、人は人を支え生きたと云う。
だが現代とは如何様なものか?
転けた人間を嘲笑い、人の失敗を悦び、挙句自らが手を加え堕として上よりそれを眺める始末。
そんな現代、目の前の光景はとても珍しいものに写った。
たった、道に落ちた俺の携帯を女の人が拾っていたのだ。
その分ならまだ"ああ中身見んのかな"と思う程度だった。女の方も辺りを見回して(俺はその時何故か隠れた)誰もいない事を確認すると、カチリとタブレット型のそれのボタンを押した。因みにロックはかかってない。何故ならストラップが洒落にならない程、それはもう何の恨みがあってもおかしくないくらいに鬼付けてあるのだ。そんな重力の物をよく落とせたと、我ながら感動すら憶える。
で、女の話に戻るが、女はボタンを押してロックがかかってないのを見ると画面をロックする程度の機能を解除しようとした。まぁそうしなければ中身が見れないのだから当たり前だ。

"そろそろ頃合いか・・"

中身には一般人にはあまり見られたくないものもある。どんな物かは企業秘密ということで。
なによに何故俺は隠れているのか。そんなことを思いながら出て行こうとしたら、女の手が止まった。俺の足も止まる。
女は暫くそのまま携帯を見ていたのだが、最終的にロックは解除せず、中身も見ること無く電源を落とした。
そしてあろうことか近くにあった、マンションの囲いの役割を果たす小さな木の並びの上に自分のハンドタオルを敷き、その上にそっと置いたのだ。優しくまるで壊れ物でも扱うかのように。
いや、確かに壊れ物と言われればそうだが、そんなに柔でもないし。それにしても優し気だったのだ。
女は満足そうに頷くとその場を去った。
ちょうどまるで棚のようにそこにある木々。そんな緑の中に映えるオレンジ色の生地と、その上にずっしり居座るスマートフォン(主にストラップ)。

「…返した方が、いいよなぁ?」

女物のハンドタオルを手にしながら呟く俺のなんと不振なこと。だが俺には気にならない。大方、頭を占めるのは"このままここに置いておいたら飛んでしまうのでは"とか、"ならラッピングでも施したほうがいいだろうか?"とか…なかなか自分らしくもない。
足元が数ミリ浮いていてもなんら可笑しくはないテンションで帰路についた。これから、ラッピングにつかう袋選びに外へでよう。


『人はとても捨てたもんじゃない』
[記事No.622427]Re:短編小説

天p抜刀d竜
 gvMql5p6
ID:[gintama9524]
PC
投稿日時:03/16 23:01

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記事No.326462への返信
あなたには人を護りたい、なんて思ったことがある?
心の芯から、純粋に、見返りを望まず
欠片も、

都合の良すぎる優しさだ。さらに言えば痛々しい。
人の想いなんて裏を返せばただの欲求のぶつけ合いで、それをわかって眺めてる鑑賞者は空笑いくらいしか浮かばない。そう、紙一重が"想い"。"想い"が"重い"にすり替わるなんて世の中腐る程前例があるのだろう。
そんな在るかすらもわからない前例に恐怖を植え付けられ、身動きも取れないなんて、

"嗚呼…本当に
なんて滑稽だろう"

何と無く客観視。目の前で笑ってる彼にすら、この手を伸ばす事が出来ない。
出逢いと別れの季節、春。
花が祝福するように咲き誇り、揶揄するかの如く桃色の花弁は風に舞って散って行く。それはもう、言葉にすら現せないくらいに綺麗で、私の最期の瞬間をその目に刻みつけてくれ!!と叫んでいるかのような……

"彼女らのために泣くのであれば許されるだろうか"

ふと感じた。"甘えてはならぬ"と。
そんなだから年齢=彼氏いない歴になるのだ。ちっぽけなプライドなんて守り抜いてるから想い苦しんだ人にすら、優しさを分けてやる事も出来ない。
そんな簡単な事が、何一つとして叶わない。
これ以上愉快な事があろうか?!
想い人に聞かせるかの如く!!あいつは好きなどではないと!!!友人に笑いながら楽しそうに!!!
それはもう、ただの本気の言葉にしかなりえないのだから!!!

泣いて媚びる事すら出来ない私を許してください
優しさに縋りこれ幸いとばかりに飛び付けない私にまだ優しさを分け与えてくれますか?

なんて甘えだろう。
甘えるな、甘えるなと言っておきながらこうなのだから。いっそ言ってしまえばいいのに。崩れてしまうのも構わずに。
きっと彼なら笑って迎えてくれるだろうに。
例え手を繋ぐ事が叶わなかったのだとしても、そばにいる事を拒否するような人ではない事くらい痛いくらいにわかっているくせに。
その優しさが甘える事を躊躇わせる。


『好きの一言が非情に重い⇔想い』
[記事No.622245]Re:短編小説


ID:[ayu1126]
PC
投稿日時:03/13 07:49

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記事No.326462への返信

部長さん部長さんと私を呼ぶ声が、遠くなったのはいつ頃からだっただろうか
黒ぶちの眼鏡の奥の細い目が、私を見なくなったのはいつ頃だろうか
私の髪を撫でていたあの細い指が、私に触れなくなったのは何時だったか

「そんなん、あんたが引っ越したときですやろ」
「まぁそうなんだがな」

別にシリアスな展開も何もない
私が引っ越して遠くに行っただけだ
別にこのバカが私から離れていった訳じゃない
声が遠くなったのは、携帯端末越しだから
私を見なくなったんでなく、見れなくなっただけ
髪も、撫でられなくなっただけ
それにこいつ、通話するときは私の写真を見ているらしい
なんだそれ気持ち悪い

「…で、だ」
「はいな」
「なんでお前ここにいんだよ」

私の目の前でニヤニヤ笑っている男に、不機嫌なのを丸出しにして尋ねると、細い指先が私の頬に触れた
訝しむように見やると、細い目をさらに細め、意地の悪い顔をしやがる
その顔にイラついて、頬に触れる指から逃げようとするが、割と強い力で顎を掴まれた
何すんだと目線で訴えると、口角をつり上げた男の顔がぐっと近付く
息がかかりそうなくらいの距離にまで近付いたこのバカは、何が可笑しいのか、喉をならして笑った

「愚問ですわ。部長さんに会うために決まってます」

部長さんの声が聴きたかった
部長さんの顔が見たかった
部長さんの髪に触れたかった
ロを開けば、聞けば聞くほど恥ずかしいことばかり言う
眼鏡の奥の細い目が、まばたきもせずに私を見ていて

「…あっそ、」

情けなことに、こう言って目線をそらすのが精一杯な私に、この男は意地悪く笑って、唇を押し付けた



素直になって下さい、部長さん
愛してますよ



−−−−−
なんだこの恥ずかしいかんじ
[記事No.620997]Re:短編小説


ID:[tama1997]
SH3J
投稿日時:02/12 20:00

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記事No.326462への返信

いつかは
いつかはこういう時が来るって分かってた

あいつらが僕を殺しに来る時が
だって僕は皆から忌み嫌われる化物
死んで当然 嫌 人間は皆死ぬことを望んでる
わかってる
それでも人間みたく生きてみたかった
遊んで泣いて勉強して
恋して

でも 僕は所詮化物
殺すしか能がない

だけど あいつらが学校まで来るとは思わなかった

僕の死に場所は此処か

今にもあいつらはここにいる全員を殺しそうだ
なら
僕が死んでも皆を守る
僕が死んでも彼女を生かせる
死ぬのは心臓が動く理由すら無い僕でいい


あいつらが笑う
僕は目を真っ赤にしてあいつらに向かって走ってた
体から固い固い尾を生やし
あいつらを突き刺してた

彼女の目が歪む

ごめん 嫌な思いさせて
だから 僕を忘れて

僕は本能のまま あいつらに向かって行ってた

自分の体から血が噴き出す
きっと醜いんだろうな
僕は

そんな僕はあいつらの弾丸が彼女へ向かうのを見た

僕は彼女の前に立ちはだかっていた
弾丸の雨を体で受け止めた
体が熱い痛い苦しい
でも

彼女を守れなかった痛みを考えたら痛くも無かった


「………くん…。」


僕は彼女に微笑む


「…失う物なんて、何も無かった…そんな気持ちを捨てて………」




君を





僕は彼女の泣きそうな顔を最期に



あいつらを殺した





彼女はこれから笑ってくれるかな?

彼女は良い人生を歩めるのかな?

分からないけれど


僕は真っ暗な視界の中で彼女らしき者に血塗れの床に横たわりながら触れる




君に幸あれ




[記事No.620879]Re:短編小説


ID:[ayu1126]
P08A3
投稿日時:02/09 19:09

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記事No.326462への返信
「早く卒業したいけど、部活だけならあと5年はやってたいね」
「…長くね?」

2月も半ばに差し掛かり、既に進路の決まった生徒たちは自宅学習期間に入っている
かくいう私も私立大に受かりはしたが、デッサンの腕が鈍らないように毎日学校には登校している
一日中美術室に籠りっぱなしではあるが

「調子はどう?」
「駄目っぽい、モリさんマジ顔でかくなるよ」

まだ受験の終わっていない副部長は、数メートル離れた場所に鎮座しているモリエールを睨みつつ、ため息をこぼしている
モリさんことモリエールは、お髭が素敵なイケメン石膏像の名前だ
首もとのマフラーの陰影を木炭で塗り込みながら、副部長は欠伸を噛み殺した

「部長は?描けてんの?」
「いや、鹿の骨わけわからん、マジむり」

自分の描くべきモチーフをちらりと見て、またやる気をなくす
煉瓦と三角フラスコまでならまだマシだ
だが鹿の骨ってなんなの、描けねぇよわかんねぇよ
どっから手をつけていいのやらさっぱりわからん

「あ、もう灯油少ない」
「じゃー補充すっか」

しゅんしゅん音をたてるストーブの上のヤカンに水を足し、灯油を入れるために火を消した
ばちん、と音がしてレバーが上がり、もわりと煙が出てきた
換気をかねて窓とドアを開け、灯油の入ったポリタンクと、手動の給油ポンプを手にとる

「給油口開けといて」

声をかけると、副部長はのびをして席をたった



−−−−

すべて実話っていうね
(´-ω-`)
[記事No.620316]Re:短編小説

季代美
ID:[ERUSIDO26]
PC
投稿日時:01/25 23:27

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記事No.326462への返信


今日は午後から雨が降っていた、何かを悲しんでいるようだった

俺には関係ないよっ全て君が悪いんだから…

俺は小学の時から君が好きだった、君の心から笑う姿に何時しか俺は惹かれていた

俺は君とようやくの思いで君と親しくなり、良く遊ぶようになった
君の心からの優しさに俺は余計に君が欲しくなった
だが昔の俺はまだ君を傷つけるのが怖かった…
君をただ見てる事しか出来なかった…

「止んで、止んでよ…早くっ止めてよ」


数年の時がたった、君は誰よりも綺麗で美しくなった、君の笑顔は何時しか俺ではなく見知らぬ誰かに向けられるようになった

あぁ、君の笑顔は俺だけの物ではなくなった

止んでっ止んでっ早く止めてっ止めてよ…この感情を


あぁ、綺麗な雨だな…でも今日雨は赤いよ…
雨に濡れた君は今日は一番綺麗だよ…

赤い赤い血に染まった君…

これで君は俺の物だよ…これからいっぱい愛してあげるから…


止んでっ止んでよ早く止めて、止めてこの感情を…





ここまでです…
何か話が変になりましたね…ヤンデレです…
ごめんなさい。゚(゚´Д`゚)゚。
[記事No.620110]Re:短編小説

白音
ID:[jmtxkgakm]
SH3E
投稿日時:01/20 18:54

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記事No.326462への返信



窓をあけると、真っ白だった。どこもかしこも、真っ白で、でも一部だけ、塊がそこにあった。塊は、こちらに笑いかけていた。
長いオレンジの鼻。
黒い木の実のつぶらな瞳。
緑の葉っぱを連なれた形のいい口。
頭に被せられてある真っ赤な三角の帽子。
下の塊に刺さってある箒の手。昨日遊んでいた近所の子供達が作ったのであろう。


「雪、積もった、みたいね」
「ああ、そうみたいだな」
「珈琲のむ」
「貰うよ」


可愛らしい雪だるまは、日の光を浴びて、徐々に溶けてきている。それを眺めながら、幼い頃の事を思い出しながら、運ばれてきた珈琲を一口含んだ。
今日、一日は、ゆっくりと羽をのばせる事ができるので、何をしようかと、隣にきた愛しい人を、抱き寄せ、雪だるまを見つめながら考えた。


「何、どうしたの」
「いや、なんでもないよ」



ーーーーーーーー
ここまでです。
[記事No.620085]Re:短編小説


ID:[ayu1126]
P08A3
投稿日時:01/20 07:55

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記事No.326462への返信

「部長さん部長さん」

彼は私のことを『部長さん』と呼ぶ
黒ぶちの眼鏡のブリッジをくい、と持ち上げ、開いているかも定かでない糸目で私を見つめながら
部長さん部長さん、と楽しそうに呼ぶのだ

「部長さん部長さん、今日は何を描きはりますん?」

真っ白な下地を睨み付ける私の肩越しに、カンバスを覗きこみながら
楽しそうに『部長さん』と呼ぶのだ

私が木炭をカンバスに滑らせている間も、油と絵の具を塗りたくっている間も、楽しそうに私を呼び続けるのだ

「部長さん部長さん」


いつになったら、貴方はこちら側に来てくれはるのですか
[記事No.617264]Re:短編小説

未来
ID:[hakuduki]
001P
投稿日時:01/01 03:16

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記事No.326462への返信
短文のつもり。
なのになんでこんなにも長いのでしょう。

前の続き。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


道端であいつが死体のようにぴくりともせずに倒れているのを尻目に、俺はため息をついた。
蒸し苦しさを何故か覚え、俺は巻いていたマフラーを取った。
火照った頬がダイレクトに冷えた空気に晒され、それに居心地の良さを感じながら俺は学校のバッグから1枚のプリントを取り出す。ぐしゃぐしゃになった、進路希望調査。それを死体……の上に落とした。
「…それ、忘れもんだ」
「………ん? あー…進路希望…」
道理で見当たらなかった訳だ。と呟きながら死体が起き上がる。
ホラーか。と言うとあいつはまだ死んでないし!と怒鳴る。右ストレートを食らってもあいつは元気だった。
馬鹿は羨ましい…。俺は深呼吸を繰り返しながら先を歩く。
あいつはまだ後ろらしい。沈黙の中、俺は一人で学校に向かう。
できれば、今はあいつの顔を見たくなかったのだが…あいつが隣に居ない、という朝の通学路はやけに広く感じた。
…やはり寒い。マフラーを巻き直した瞬間。後ろから悲鳴が聞こえた。…女らしくないあいつの声。「あ」が連呼されていた気がする。
何だ?と振り返えようとした時には、もう隣にあいつが居た。
息を切らして汗だくな姿をみるに、猛ダッシュして俺に追い付いたのだろう。汗だくな手に肩をガシィイと掴まれた。捕まれた。
「…なんだよ?」
「おまっ、なっ、おめっ、ちょ、み、みみみみみぃ」
「は? 耳?」
「見たぁああ!?」
…………………。
沈黙が走った。空に甲高い悲鳴が響く。
あいつの顔は走ったからか、真っ赤だった。今にも爆発しそうな顔のあいつと俺の固まった石みたいな顔が向き合い、沈黙してから数秒が過ぎる。
……その言葉が指しているのを想像して、真っ先に浮かんだのは、お嫁さん。俺の。
「…見てねーよ」
「嘘だぁあ!! それ否定した時点でアウトぉおおお!!」
………マフラーが、また不必要になった。
「………………見てねぇ知らんおめーの進路先なんざ微塵も興味ねぇし見てねぇ」
「ちょっ!! 今の会話で私の進路先に行く時点でそれもうアウトじゃん!! アウトに限りなく近いアウトじゃん!! もはやアウトだよ!!」
会話が成り立たず。成立させる気もなくて、俺は速足で歩み始めた。
その後ろをあいつはぎゃーすか騒ぎながらついてくる。
やめろついてくんな。ついてくんなってか私こっちが通学路なんだけど!?
「知らねぇつーの。味噌汁の作り方も知らねぇお前を嫁とか知らねぇ」
「アッウトォォオオぉオ!!
こいつただのアウトだぁああぁぁあああ!!」


………………ひんやりといつもより冷たい空気が包む空に、あいつのあいつらしい悲鳴がこだました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
長い! すみません。
あ。
あけましておめでとうございます!
[記事No.617263]Re:短編小説

未来
ID:[hakuduki]
001P
投稿日時:01/01 03:13

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記事No.326462への返信
8月8日に書いたヤツの続きです。結構前ですね。
なんか季節がズレてる気がしたけど気にしたらアウトです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

“前回のあらすじ”
幼なじみのアイツの進路希望調査の紙に、俺の名前に加え“お嫁さん”……つまり俺のお嫁さんと書かれているのを見てしまった。まる。


………死にてぇぇえ…。

「ちょっ、人を見た途端にどうしたのさ!?」
いつものように当たり前のように、隣に居たあいつを見た瞬間俺は思わず頭をぶつけてしまった。近くにあった電柱に。
乾いた朝の空に、ゴスッという音とあいつの女らしくない悲鳴が響いた。
朝、こいつと学校に登校するのはいつもの事だ。だからあいつが普通にナチュラルに隣に立つ事だって当たり前なのだが、俺が顔を真っ赤にしてしゃがみ込んでしまっても仕方ないというか当たり前だというか…、
「どうしたんだよ…頭打っ……たね。うん。今」
頭を抑え悶々と唸る俺の上から、何か声が降ってくる…。
何故だか、少し嬉しそうなあいつは、1、2歩後退していた。引いてやがる。だが、目が爛々と輝いてやがる。
殴りてぇ…が、しかし、
「馬鹿になったの? ねぇ、馬鹿になったの?」
「…なんで嬉しそうに言うんだ馬鹿。それから顔寄せんな阿呆」
その輝いた顔がズイッと近付いてきて、俺は妙に動揺してしまった。つか、離れたり近付いたり忙しいなオイ。
思わず口走ってしまった馬鹿と阿呆。その言葉に、カチンときたらしいあいつは「こいつもっかい頭打てば私、越えれるかなぁ…」と呟きながら、俺に閉め技をかけてきた。言葉と表情と行動が一致しない。

なんとか抜け出して蹴り返えそうとした時、ハッと思いあたる。昨日の出来事だ。
お嫁さん。
誰のだよ。こいつが?俺の?
「…〜〜〜アホッ」「は? …ぶほっ!?」
咄嗟に蹴りから殴りに切り替え、あいつの顔面に右ストレートを入れる。朝の清々しく白い青の空に、女らしくないあいつの声が響く。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
嘘だろ…長すぎる、だと。
すみません。一旦区切ります。
[記事No.611451]Re:短編小説

天p抜刀d竜
 8tBgyKlY
ID:[gintama9524]
re
投稿日時:12/09 23:21

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記事No.326462への返信
愛 人 そ と 大 其
し な の あ 層 の
て ら 男 る 昔 噺
い ざ ` 男 の ^
た ら   が 噺 ハ
そ む   お と ナ
う 物   っ 聞 シ
な ノ   た く -
  怪   そ が
  を   う
     で
―‐―‐―‐―‐―‐―
愛 男 だ 呟 ┐村
の が が い 男 の
言 い し て は 者
の く か お 化 ら
葉 ら し っ か は
を 物 ` た さ み
降 ノ   が れ な
ら 怪   男 て
せ に   は い
ど     本 る
も     気 の
      と だ
      └


「人と妖は相容れぬ」

いつもの凛とした表情で彼女は言った。男は二月(ふたつき)もついやし、一日も欠かさず迫った。
だがその首が縦に振られることはない。

「人と妖は戯れているがいいのよ」

彼女が言うに、人間は妖の、妖は人間の世に必要以上に関わってはいけないのだと。こうして戯れ事の域を脱せず、自然の理に触れぬよう過ごすのが一番なのだ。
無花果(イチジク)の色をした目を吊り上げて、着物の裾を翻す。布が刷れる度に香る甘い匂いは、本来ならば人間を誘き寄せる疑似餌の役割なのだという。

「私が貴様を喰わぬだけ、満足しろ」

男がこうして言い寄るようになってから、この一帯で起きていた行方不明事件は無くなった。

「貴様はもう十分、私の心とやらを掻き乱している」

依然として彼女の表情は凛としている。

「なぁ人の子」

彼女は男の手をとると自分の手で包み込む。

「この温かみが貴様から消え失せた頃、私の暦は全ての内の半分にも達してはいないだろう」

はぁ…とため息を一つ。凛とした表情のまま、彼女は手の内にある男の肌の感触を感じながら呟いた。

「失(な)くすというものが、これほどまでに儚いと思ったことはない」

私はこの先も貴様と戯れに共にあろう

だがしかし、貴様からこの温かみが消え失せた時
私は貴様の魂を喰らおう

そして

「私と共に、此方の世を生きれば良い」

男は思った。これ程までに彼女を恐れたことはないと。
だが男はさらに思った。
彼女の初めての微笑みは、苦笑いにも満たない歪みであって、それでも不器用ながらに表に出された形は

それはそれは温かな表情であったと。


【昔の今に続く噺】
End.

‐あとぅがき‐―‐―
ただ縦書きやってみたかっただけ
[記事No.611060]Re:短編小説

天p抜刀d竜
 8tBgyKlY
ID:[gintama9524]
re
投稿日時:12/07 19:21

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記事No.326462への返信
『少年少女前を向け』

小学五年生の烏合に一体何ができると云うのか。
密閉空間に差した光は極微量なもので、さらに言えばとても薄く、幼児が這えば潜れるか否かの隙間だった。
現代科学の防災が仇となり、誤差動で防火シャッターが閉まった空間は密閉とは言えない。何故なら本来ならば何も物を置いてはならない筈のその場所に、ゴミ箱が置き忘れられたかのように佇んでいたのだ。今ではシャッターの勢いに半分が潰れてはいるが、それだけでも立派に役目を果たしていた。
期間限定の夜中の水族館。楽しみに来た筈のお客達は若干薄まる空気に怯え、係員も何度も無線を通して救助を求めたが、その区画は前々より電波が悪いと言われている場所だった。

「こうなったら…お子さん達に託しましょう」

係員は30cmほどの隙間に目を向けていった。夜の開園とはいえやはり水族館、小学生ほどの小さな子供がいくらかいる。
その子らに外へ出てもらい、救助を求めてもらうのだ。
だが夜の水族館は暗く不気味で、両親がいるからまだウキウキと見ていられるものの、子供だけとなると広い暗闇に歩き出すのは勇気がいった。

「頑張って!」

「頑張れ!大丈夫だ!!」

「お願い!頑張って!!」

10人もいない子供達は大人達に抱き締められ、背を押された。
シャッターを潜り抜けると一気に暗闇が視界を占める。後退り、互いに握り絞めていた手に力を入れ。
一歩一歩と確実に歩き出す。見える光は非常口の緑だけ。ライトアップされた魚が不気味に揺らぎ、ドンッと水槽に当たる音に女の子が悲鳴を上げた。
後ろから「どうしたっ?!大丈夫か?!」と声が聞こえてくる。振り返れば、大人達は僅かな隙間からこちらを伺い、心配そうに見詰めていた。
一人の男の子が泣きじゃくる女の子の頭を撫でて、「だいじょうぶ」と声をかける。

「おれ、ハリケンジャーだから
怖いやつが来たら追い払ってやるよ!!」

「こんなのただの魚じゃん!」

ドンッ!ガンッ!

「「「「ぎゃあっ!」」」」

時々悲鳴が上がるも確実に前へと進む。だがなにぶん子供の足に水族館は広い。
ふと、一人の男の子が緑色の光に浮かぶ『スタッフルーム』の文字に足を止めた。

「どうした?」

「あそこに水族館の人がいるんじゃないかな…」

じぃ…と眺める子供達。が、突如その扉は開いた。

ガチャッ

「っぎゃぁぁああああああああああ!!!!」

「うわっ?!な、なんだ君達?!」
[記事No.610988]Re:短編小説

天p抜刀d竜
 8tBgyKlY
ID:[gintama9524]
re
投稿日時:12/07 00:12

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記事No.326462への返信
どちらか判断しがたいなら信じてしまえばいい、
たったそれだけのことだったのだ。

幽霊はいるの?

地球がビックバンで出来たって本当?

歴史は本当に学校で習った通りなの?

世の中に溢れる確信の無い答え達。たとえ"正解"が間違いだったとしても、それで被害を被ることがなければそれでよかったのだ。強いて言えば少々の恥をかく程度で済んだのだろう。

叫んだとして止まるだろうか

嘆いたとして止むのだろうか

20XX年の12月に来ると言う何とか文明が指した世界の終末。それはその日の日の出と日の入りの丁度に起きた。

「もう無理だよぉ!!
後ろ火事起きてるし…私たち死んじゃうんだぁぁ!!!」

「まだ最深部じゃねぇっ!
生き残れる確率はある!!」

「地下って判断自体間違いだったんじゃね…?」

「だってさ、あのまま外にいたら確実に死んでたよ?」

「なんでもいいけど何処まで降りればいいわけっ?!
ねぇ圭介!!」

「俺が知るか
おい先頭、横島隊長
どうなんだよ」

「俺としては出来ればこのまま最深部に到達してほしくねぇ」

6人の若者達は日の出を見ようとその日、深夜から車をとばしていた。あの予知の話もネタとして上がり、0時丁度…。
空から降り注いだのは数多の隕石だった。何故人類は隕石の落下を計測出来なかったのか……それは後に生き残った人類が『現代科学で認識できない物質』を見付けたことで明かされる。
若者達は勿論焦った。焦る以前に唖然とした。
高層マンションに当たったそれは衝突と共にコンクリートを砕き、道路に降り注ぐ隕石は車の手前に落ちて若者達の乗る車を横転させた。

『ッー……っ?!!
オイ!大丈夫か?!』

『な…なに…?何なのッ?!』

『インダス文明凄ェ…』

『インダスじゃないから』

『言ってる場合か
雪穂、大丈夫か?』

『うん……』

奇跡と言えばいいのか、全員無事に掠り傷一つ無く車から這い出し、視界に外を移した。
地獄絵図とは恐らくこの時のためにある単語なのだろう、と悟らされる。どこもかしこも燃え上がり、人が何処へ向かっているのか走っている。車に乗り込んだそばから隕石が落下。
最早逃げ場などこの地球上には…。
そう思ったところで横島が声をあらげた。

『向こうに地下通路のあるビルがあったはずだ!
そこに行こう!!』

地下なら隕石が落ちても何とかなるかもしれない。小さな希望に身を投じ、6人は走った。
[記事No.610060]Re:短編小説

りおん
ID:[elwa]
PC
投稿日時:11/25 21:44

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記事No.326462への返信



「ねぇ、何を読んでるの?」
そんな上からの声で、僕は数十分ぶりに顔を上げた。
見ると、薄茶色の瞳がこちらを覗き込んでいるところだった。僕は、素早く手に持っていた本を右によける。
「なんでもいいじゃん、何読んでるかなんて」
「わかってないなぁ、会話のきっかけってやつでしょ。隠さなくても別に気にしないわよ」
覗き込んできた彼女は、軽く呆れたようにそう言って、僕の隣に陣取った。彼女が本になんて興味がないのは知っているけれど、それでもやっぱり数センチ見えない位置に移動させる。東の方から吹いてきた風が、髪を巻き込んで踊ってから通り過ぎていく。
「ていうか、なんであんた屋上まで来て本読んでんの? 教室でいいじゃん」
「紗文(さあや)には関係ない」
そっけなく返すと、彼女ーー紗文は、ああそう、と同じくそっけない返事をした。さらさらの髪をセミロングにした紗文は、クラスでもよく目立つ方で、文化祭の実行委員なんかも普通にこなしてしまうような奴だ。その上顔立ちもそれなりに整っていて、男子にも結構人気があるのを僕は知っている。幼馴染みじゃなかったら、僕なんかは顔も覚えられずに終わってしまっていたのだろうなあと思う。
「なに? なんか文句あんの?」
紗文の方を見ていきなり黙った僕を訝ったのか、紗文が軽く睨んでくる。
「べ、べつに」
「変な奴」
紗文はそう言ったけれど、特別気分を害した様子はない。
「紗文こそ何してんの。こんなトコで」
「なんとなく。今日晴れてるし、屋上気持ち良さそうじゃん」
「…紗文も別に理由ないんじゃん」
「私は屋上まで読書しには来ないわよ」
紗文はそう言って、んー、と気持ち良さそうに両腕を伸ばす。僕は、右手に持っていた本を数センチ遠ざけて、少しだけ身体を動かした。
「うん、良いねここ。昼休み終わるまでここにいよっか」
「……それ、僕も含まれてるの?」
「なに、私の隣嫌なの?」
「……まあ、別にいいけど」
「じゃあいいよね、邪魔しないでね」
紗文は、僕の返答には興味なさそうに、そのまま空を仰ぐ。僕も、気付かれない程度に彼女を盗み見てから、空を仰いだ。
空は青く高く透き通っていて、ぬるいくらいの陽射しが陽だまりに落ちていた。
たまにはこんな日も悪くないかな、と少しだけ思った。

end.



+++++++++++++++
特に何の考えもなしに書いてしまいました…。なんでしょう、これ。

参加失礼しました。
[記事No.609971]Re:短編小説

天p抜刀d竜
 8tBgyKlY
ID:[gintama9524]
re
投稿日時:11/24 22:29

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記事No.326462への返信
社会へ羽ばたく貢献者となれ!!
それに反する人間は悪者になるの?

この質問に偽善者はニカリと素敵な笑みを見せて

「それは違うさ
人のためでなくてもOK
自分の為に羽ばたくんだよ

綺麗に着飾った、耳を塞ぐのすら億劫になる文字を吐き出した。
キラキラと飛び回るそれを払いのけ、聞くだけ聞いた小学生。年齢だけで純粋無垢云々を決められては迷惑だと云う。
そのまま大きくなった小学生だった大人はどうやら仲間外れになったらしい。

「なんで皆と同じことをしないの?」

と聞かれれば

「同じことをしても無駄だから」

と答える。

「何故一々皆と違うんだ?」

と聞かれれば

「それが一番自分らしいから」

と答える。
そんな彼の職業は仏頂面、鬼の門番と異名を持つ保健室の先生。異名は3-2の佐々木さん命名。
擦り傷程度では行けない保健室、というのがその小学校の有名な話であった。勿論彼が来んな、と鬼の形相で追い返した事など一度もない。ただ単に元々の顔面に生徒が恐れおののき来ないだけだ。
小学生時代からませていた彼はなんともひねくれた人間へと成長を遂げていた。それが顔に出てしまっている、ということだ。

「はい、熱は無いから頭痛がするようならそこで寝てなさい」

「ごめんなさいいいいいっ!」

あ…と待てと言う前に飛び出していく生徒。どうやら生徒の耳には「熱がねぇなぁ?てめぇそこで永遠の眠りにでもついていくかあ゛あ゛ん?」とでも聞こえたらしい。先生マジックだ。

かれこれ三年経ち、そろそろ慣れてくれる生徒がいてもいい筈だが一人としていない。未だに各クラスの担任から「うちの生徒があなたに殺すと脅迫されたと言ってるんですが…」と相談が来る。その担任達ですら数歩下がり、腰を低くした体勢だ。

"僕はお前らに何かしたか……"

勿論心当たりなど無い。そんな過去は無いからだ。



偽善者は無表情に言った

「綺麗事が通じるのなんて結局は人前でだけだ
ならば一人の人間には自分の素をさらけ出せ」


偽善者の言葉に耳を傾け、頭に叩き込んだ小学生だった大人。
彼はこの保健室という空間を最適な場所だと断定していた。


…―END――‐――――
[反省会]
絵文字を使いたかっただけ
この使い方でどうだぁっ!!(どやぁっ(殴
サーセン
[記事No.609828]Re:短編小説

烏竜
 5BIibxy2
ID:[696966100]
PC
投稿日時:11/23 11:24

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記事No.326462への返信


誇りより大事なものが無かったのか。

そう問いたかった。







何度目か分からない春が来る。
今日も多くの花びらが宙を舞い、多くの人々が木を見上げる。
君の誕生とともにこの庭に植わった木が、もう30歳になる。
君と共に見続けたかったこの木が、もう30歳になる。

分かってはいた。
君はいつでも誇りを持っていて、それが一番なんだという事ぐらい。
分かっていたはずなのに。
僕はいつまでもこうやってこの木を眺めているんだ。
馬鹿みたいに。

それはやっぱりきっと分かっていなかったから。


「…また見てたの?」


19も離れた弟が、僕にそう問うた。


「うん。綺麗だろう。」


まるで姉みたいに。
世界中で一番綺麗な桜の木だろう。


「……母さんがご飯だよってさ。」

「すぐ行くって言っといて。」


すぐ行く気なんか無いくせに。
もう30分は動く気なんか無いくせに。


「…早くね。」


それでも行ってくれる弟は、優しいと思う。
とても優しかった姉に似て。







ねぇ姉さん。


僕は姉さんが大好きだったよ。
この世界の何よりも。

なんで僕を置いて行ってしまったの。

なんで他の人の為に行ってしまったの。

僕はそんな奴より姉さんにここに居てほしかったのに。








本当に誇りより大事なものなんて無かったの?
絶対に無かったの?




僕は誇りに劣っていたの?




ねぇ姉さん。

優しく美しく、誰よりも美しかった姉さん。



誰よりも大好きだった姉さん、答えてよ。





――――――――――――

誇りも大事だけど残された人の身にもなれよ馬鹿野郎って感じの話です。
[記事No.609284]Re:短編小説

かすみ
ID:[kasumi60702]
F11C
投稿日時:11/13 19:23

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記事No.326462への返信

校門前で、彼女を見つけた。

「おはよう」

いつものように挨拶すると、彼女も「おはよう」と返してくれたけれど、どこか元気がない。

「今日やばいよ。授業中に泣くかもしれない」

そう言った彼女の目にはうっすらとすでに涙が浮かんでいて、ドキリとした。

「何かあった?」

なんて聞けなかった。

彼女が、何も聞いてほしくなさそうだったから。


言葉通り、授業中に彼女は突然声を上げて泣き出した。

授業をしていた先生も、驚いて彼女に駆け寄った。

彼女は泣くだけで何も言わなかった。

それから彼女の様子は少しずつ変わっていった。

笑顔が消えた。

口数が減った。

虚ろな瞳。



「何かあった?」



あの時腕を掴んで無理にでも涙の理由を聞いていたら、彼女は今笑っていただろうか。



**************

短すぎ・・・る?(^^;)
何かこんな感じのシリアスな話が書きたい。
[記事No.607863]Re:短編小説

天p抜刀d竜
 8tBgyKlY
ID:[gintama9524]
re
投稿日時:10/23 16:09

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記事No.326462への返信
「大丈夫だよ」、と微笑んだ彼女はもう
"駄目だ"とわかっていたんだろう。

『私ね、治ったら海に行くんだ』

『おーいサラッと死亡フラグ立ててんじゃねぇよ』

べしんっと持っていた雑誌で軽く叩くと一瞬頬を膨らませる。だがすぐに笑顔が返ってくる。

『別にね、海じゃなくてもいいの
遊園地とか、水族館とか…ううん、買い物に行くだけでもいいの
外を二人で歩くのが私の今の夢』

『夢ならもっとでっかく持てよ…
なんかさ、金持ちになるとか』

『成金、お金の亡者』

『うっせ』

他愛もないこの会話こそが夢への、彼女の望む世界への一歩となる。そう信じて他愛もない話をしながら、彼女と笑い続けた。

『そんな所いつでも連れてってやるよ
なんなら海外まで飛ばしてやるぜ?』

『本当ッ?!
私北極でシロクマ見たい!!』

『俺の予想遥か斜め後ろ行ったな』

苦笑する俺に彼女は本気だ、と雑誌を取り上げかなり本気で叩いてきた。これだけ元気があれば大丈夫だな、なんて…彼女自身の言葉にも安心しきっていた俺。

これからもずっと、同じ様な日常が続くなんて、どこにそんな確証があったんだろう。

俺の浅はかな願いも虚しく、海に来たもやることは無し。一人では潮風も目にくるだけだ。

"出来れば一歩でも外を歩かせたかった"

なんで彼女があんなに苦しまなければ、なんて思うのは身勝手だろうか?

"最期…恐かったのかな……"

バイトなんてやってる間にサックリと逝きやがった。俺は話す間すら無く逝かれてしまったのだ。

"北極行きたいっつーから、幾らか知らんけどシフト固めたってのに"

調べたら結局庶民には手が出せないような場所だった上、一緒に行く相手すらいなくなってしまったのだから清々しすぎて笑えてくる。

「だから死亡フラグ立てんなっつったろ」

一言を馬鹿にすることなかれ、ということだ。
一人で眺める海は目に痛かった。………いや、一人ではない…かもしれない。

「"現実から目を背けたら負けだよ"」

「幻聴が聞こえるなー…」

誰か、この状況を説明できる人がいるのなら教えてほしい。
彼女の葬儀で泣かなかった俺は非道なのか?隣にうっすら彼女が立っていたら泣く子も黙らないか?
嬉しさ込み上げるも恐怖その倍。

「"次は遊園地ね"」

「お前少しは俺の心境読み取れ」

恐怖その倍…だけど、苦笑も笑顔に変える力が彼女にはあった。

End.

ナニコレw
[記事No.607482]Re:短編小説

天p抜刀d竜
 8tBgyKlY
ID:[gintama9524]
re
投稿日時:10/17 18:32

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記事No.326462への返信
席が隣になって恋愛成就?
そんなものは漫画かアニメでしか実現しない。泣いて終われれば良い方だ。

そんなことを思うのは臆病者の定理か?

毎週同じ曜日、同じ時間に隣になる彼に、別の何かを感じ始めたのはいつ頃からだっただろうか。取り敢えず彼女は自分の気持ちに気付いた。

そしてそれに顔を歪めた

まるで汚物でも見るかのような。蔑んだ目。
それから彼女はその気持ちを殺しにかかった。隣に座る彼と笑い合いながらも、何度も、何度も、自分の気持ちに刃を立てた。
そんな彼女の行動とは裏腹に、気持ちはどんどん膨らんでいく。彼女は日を負う毎に追い詰められた。
嬉しい筈の隣同士。

いっそ一生離れていればよかったのに

念願だった筈が、何故だろう彼女は自分でそれを悪夢に変えた。
彼女は知っていた。幸せであるほど不幸になると。人は自分を嫌いだと。

彼女は知らなかった
全てはただの暗示だと
自分を追い詰めた暗示だと

『告白って男と女どっちが言うのが定番なんだろうなー?』

『俺一定以上先に進めねぇからなービビリだから』

『携帯のメアド交換しよう』

「これだけあれば
普通の女は動くのにねぇ……」

今日も彼女は、湯に浸りながら見えない涙を流す。きっと彼のためだと思いながら。

"私よりいい人沢山いるよ
変な女に引っ掛かったらダメだよ"

逃げているだけの自分を『違う』と頑なに否定して。知らないフリをする。


二人は知らない

どちらも【臆病者】ということを

‐End‐

―――――――――‐
●アトゥガキ
え、ただの絶賛今の俺(゜∇゜)←
[記事No.607472]Re:短編小説

きみ
ID:[boopc410]
PC
投稿日時:10/17 06:36

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記事No.326462への返信
突然の出来事に、声も出なかった。
間隔が空いたあと、一度鋭く息を吸う音が聞こえた。それが自分の行為だと気づくのに少し時間がかかってしまった。
無意識に自ら息を止めていたようだ。彼女は恐る恐る呼吸を再開する。
壁に寄りかかっているのに、足が震えて上手く体を支え切れていない。少しでも力を抜くと簡単に足元から崩れ落ちてしまいそうだ。
それでも気丈に踏ん張っているのは、彼が目の前で行く手を阻んでいるからだ。情けない姿は見せまいと必死に力を込める。
後ろは壁、前には彼。顔の両隣には彼の腕が伸びている。
退路を完全に断たれた。逃げ道をなくし視線の置き場にも困って俯きかけると、彼が口を開いた。

「……オレ言ったよね、オレ以外の男が何か言い寄ってきても口利くなって」

静かな口調がさらに恐怖を煽る。怒っているのは明らかだ。
しかし彼がこれほど怒る理由を彼女は理解できない。彼女は必死に弁解を試みた。

「で、でもあの人はただ道を聞いてきただけでした。困っている人がいるのに無視なんて――」

心なしか彼女は、足だけでなく声も震えている。
よほど自分が恐いのか。自分はそれ程彼女に恐怖を与えているのか、……いや、意識されているのか。
たとえ恐怖という言葉であったとしても、彼は彼女が自分の存在をその全身で感じていることを、ひどく心地好く思った。込み上げる笑いをなんとか抑え、無表情を作る。
そして彼女の言葉を遮り、彼は一気にまくし立てた。

「ホントにそう思ってるのなら、君は世間知らずのお馬鹿さんだよ。人を見る目がない。裏を読めない短絡的な考えしかできない、そんな君が世の中でやっていけるわけがないよ」

そうだろ、と彼は視線で彼女を捕らえ続ける。高圧的で独善的な言動だった。
その時、畏縮していた彼女が変化を見せた。
恐怖は拭い切れていないものの、はっきりと意思を持った目を彼に向けた。

「……そんなに全てを疑ってたら、なにも信じられなくなっちゃいますよ。私は……嫌です、そんなこと」

彼女から反抗の兆しが見られ、今度こそ彼ははっきりと笑った。そのとても楽しそうな笑みに、彼女は背筋が凍るような思いだった。
それはまるで純粋な少年のように綺麗だったからだ。

「……そう。君はそうやって、あくまでもオレに反抗するんだね」

笑ったのはほんの一瞬で、彼は静かに呟くと、彼女の両側を塞いでいた自らの両腕をゆっくりと降ろした。あまりにも抑揚なく放たれた言葉だった。
彼の意外な行動に一瞬疑問を感じたが、とりあえず解放されたことにそっと胸を撫で下ろす。
張り詰めていた空気が和らぎ、気まずさが残る。彼女がその間を払拭するように彼に声をかけようとすると、彼が不意に彼女の方へ手を伸ばした。
びくりと肩を揺らした彼女に、彼はもう一度笑ってみせた。彼の手が彼女の頬へとたどり着く。
そして彼女は、呆気なく彼をその唇に受け入れてしまった。
またそれも瞬きの間に済んでしまい、彼女は口を挟む暇も与えられなかったのだ。
彼女が発しようとした声が彼女の喉から出ることはなかった。。
そこに先程の束縛はない。だが彼女は完全に四肢を動かせなくなってしまった。
その様子を見て彼の口元が楽しげに動く。それは五文字の言葉を表していた。
その意味を理解した途端に、最早彼からは逃げられないと悟り、彼女は終に口角を上げた。

彼も彼女も、自らに侵食してくる互いを、恐ろしくも愛してしまったのだった。

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