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268件のレスが見つかりました
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投稿者 親記事
[記事No.326462]短編小説

まなか
ID:[shiroikotori]
PC
投稿日時:04/03 19:27

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 ま、間違って短編小説スレッドを削除してしまいました……!!
 本当に本当に申し訳ない。消してしまった作品の作者様にお詫び申し上げます。

 また作りますので、また投稿していただけると嬉しいです。すみませんでした。

 一つのレスに収まる長さの短編小説を書きましょう。
 投稿は何度でも大歓迎です。連続投稿も可能。気が向いた時に参加してください。
 スレ主も頻繁に出現します。

投稿者 スレッド
[記事No.336367]Re:短編小説

虎縞
ID:[tigerhalfowl]
W52P
投稿日時:07/18 13:14

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記事No.326462への返信
【幸福の画家―或る画家その二】

 画家の絵は檸檬色の光で満ちている。そこが少女の部屋であれ、アルコールで染まる娼館であれ。その光は豊かな幸福の香りがする。全てを優しく包み込む、太陽の柔らかな筆致。
 画家の絵はブルーが大胆に潜む。天空の欠片を砕いたその青の面積で、画家が豊かな生活をしていたのだと物語る。かつて聖母にしか使われないブルーを少女を彩るのに使った画家。
 画家は寡作である。絵を描かずとも暮らして行けたのである。時に絵の鑑定士として、時にギルドの理事長として。そうであるので、画家が永い眠りについた後、画家の残した絵は歴史に飲まれ、画家がそうしているように作品も眠りにつくようになる。ただでさえ寡作であった画家の絵は、歴史に飲まれ溶かされ咀嚼され、その数を減らした。
 画家が眠りにつき幾百年過ぎた時、動乱の世に拾い上げられたのは、画家の絵が静かな檸檬色で満ちていたからである。画面に満ちる幸福なその色、そして冴えたブルー。動乱の時代に画家の豊かな幸福は、人に再び求められる事となる。
 檸檬色の幸福を描き出した画家の名前はフェルメール。オランダ人である。



……………

美術への招待、【或る画家】その二。今回はフェルメールでした。前回の画家は虎縞が大好きなアングルです。虎縞はアングルの絵と結婚したい(笑)
最近フェルメールなんて絵画好きにしては平凡な画家にひどく惹かれまして。あまりにその画面が幸福で泣きそうになる。フェルメールは幸福を描き出す。これを読んだ人がフェルメールを見て幸せになりますように。そんな祈りを込めて、美術への招待を。
[記事No.336503]Re:短編小説

まなか
ID:[shiroikotori]
PC
投稿日時:07/20 02:30

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記事No.326462への返信
 せりふが非常に少ないです。これは特色です。特色だと思って改善は諦めて……います……。
 場景描写ばっかり多くて自分でも困ってるんだ。

 * * * * *

  〈二人〉

 久しぶりに行った学校は、亜紗(あさ)を煙たげな空気で包んだ。滅多に教室に顔を出さないから、友達なんてものはいず。教室の生徒は見知った人間たちの中ただ一つ異質なモノとして少女を捉える。
 疎外はなんとも思いはしないけど、彼らが自分を除け者にする時のわずかな気遣いが、少し煩わしかった。
 クラスメイトなんて言うのも憚られるほど希薄な繋がり、それでも今は同じ部屋で同じ内容を勉強しているその事に、違和感を感じる。
 無意義な時間だ。
 進学に必要な出席日数の消化、勉学、そういう意義はあるけれど……。
 教師の声と、黒板にチョークがぶつかる音が無意識の内に聞こえていた。大きく取られた窓から眺める、美しい白縹色の空。
 教師に問題の解を問われたが、亜紗は立ち上がらず、空を見て頬杖をついていた。
 そうして、乾いた、退屈な時間は過ぎる。無為に無気力にただ居る、それだけで時は経過してくれるのだからいい。
 放課後、部活を持たない亜紗は鞄を取った。その時声をかけてくる人間はいるはずもない。
 校門の前まで来たところで、停止したバイクのエンジン音に顔を上げた。
「アサ」金髪の、見ただけでわかる非行少年。
「三藤」と呼んだ。
「乗れ」一つしかないヘルメットを投げてくる。
 低い騒音を奏でる機体の後部に、スカートで跨った。
 帰宅部の生徒が、凶暴そうな男と、そのバイクの後ろに座った亜紗に怯えるようにしているのが見えたが、至極どうでもいい事である。
 バイクが走り出してから、後ろに手を付いた。「落ちるぞ」と注意されてもそのまま。
 空が夕焼けに赤く染まりだしていた。
 螺旋状になった道路の坂を駆け上り、風を裂いて走り続けた。二人とも同じ場所へ帰るために。
 同居しているけれど、目の前の男は恋人ではない。友人とも微妙に違う。親しくもなく、でも "近い" 、存在。
 男は、亜紗が外出すると必ずバイクで送り迎えした。
 その後ろに撫で付けた金髪が風に揺れる。
 逆光で黒ずんだビルの影が連なってできた地平線の上に、黄昏の大空が広がっているのを、少女は透明なバイザー越しに眺めた。
 冷気を帯び始めた風を浴びてそれに息を詰まらせ、もう一人の存在を認めながら、赤い幽光を満たし輝く夕の空を目に感じて走る。この時はほかの何より快く、また男も同じように思っている事を知っていた。

 * * * * *

 毎回一番悩むのはタイトルです。付け忘れることも……ある。

 虎縞さんの文章が好きだ。
 文章力高い人が多くて読むの楽しみにしてます。
[記事No.336580]Re:短編小説

りお
ID:[bell4724]
SH905i
投稿日時:07/20 21:24

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記事No.326462への返信
多分四回目です。
最近盛り上がっていてとても楽しい…。
暗くて嫌な話注意。
………………


愛してほしかった。

「僕は、本当にそれだけだったんです」


少年は訴える。
淡々と、だけれども切実に。しかしそれは口調の話だけであって、彼の表情は間違いなく無であった。
悲しみ、喜び、怒り。少しの戸惑いでさえも見出だせないそれに、ぞわぞわと何かが背を駆けてゆく。

「愛してほしかっただけ、だと?」
「そうなんです。僕は、純粋に愛がほしかった。誰かの愛情を感じたかっただけなんです」
「それが動機なのね」
「ええ」

少年は、顔を上げない。
何かを探すように、けれどピントの合わない視線を、ただ足元へ落とす。
思考を働かせているのか、それすら分かり得ない。質問に対して、用意された回答を機械的に返しているだけに思えた。

「被害者があの人でなければならなかった理由は、あるのでしょう?」
「ないことは、ありませんが」
「教えてちょうだい」

くいと持ち上げられる口の端。
初めて見た笑顔は、息を呑むほどに美しかった。そしてようやく合った視線は、逃亡をはかりたくなるほどに冷え切っていた。

「幸せそうだったから。笑って、手繋いで。自分の死なんて考えもしないで、呑気に、迂闊に、歩いて」
幸せそうだったから。

滲み出るこれは、憎悪だろうか。
彼の怒りは水のようだ。静かに音も立てず、こぷこぷと溢れ出る水のようだ。ゆっくりと空間を満たしていく、水のように柔軟で冷たく鋭い怒りだ。
彼は、子犬が泣くように笑う。


沈黙の溜まった部屋に、時間切れのチャイムが鳴る。彼の話を聞けるのはこれまでだ。あとは繰り越し。
けれど、きっともう新しいことは掴めないだろう。今日聞いたことが全てだ。彼が人の命を奪った全ての理由は、今日語られた。
これが十で、もう一片も絞り出せない。

「ねえ」

両サイドから屈強な男に挟まれ、少年は情けない声を出す。年相応の、儚く弱い音だった。

「僕の母さんは、泣いていましたか」

目を閉じる。
確かに泣いていた。白く細い頬に涙の筋をいくつも残し、いかにも哀れに泣いていた。

「ええ、泣いていた。ずっとね」
「そうですか、よかった」

ほっと息を吐く姿は、痛々しい。が、本人の表情は安らかだ。
寒さから逃れたような、探し物を見付けたような、そんな表情。

「母さんは、僕を愛していたんだ」



彼はきっと、分かっているのだろう。
彼の母が、彼のために涙を流したのではないこと。彼への愛故に、苦しんでいるのではないことを。
涙の理由は彼であるが、そこに愛情は存在しない。
息子が殺人を犯し、それにより彼を虐待していたことが世間にばれ。
これからの人生に絶望したがための涙なのだろう。彼女の涙には、苛立ちと苦悩と。
あと、愛情。
そんな運命を背負ってしまった、自分への愛情。息子により生涯をめちゃくちゃにされた、自分への強い強い愛情のみ。


愛してほしかった。

彼は言った。
愛されていないことを知った上での、告白だった。
それでも愛を夢想して、最後の最後まで自らを守ろうとした。
そんな、ある事件の話。



………………
暗くてすみません。
事情聴取の様子。
ある本に、どれだけ傷付けられても子供は親を裏切れないとあり、思わず。

お粗末様でした!
[記事No.337056]宇宙少女

みなみ
ID:[megalomania0]
PC
投稿日時:07/24 22:39

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記事No.326462への返信
 彼女の寝癖直しを手伝いながら、僕は朝食は何にしようかを、彼女に尋ねてみた。

 僕の「朝ごはんは何を食べようか?」という些細な質問に対して、君は3分のタイムラグがあった後に小さく「おかゆ」と答えた。こういう会話中のタイムラグが彼女にはポツポツと見られる。こういうことがあると僕は、もしかしたら彼女は実は宇宙とか遠いところにいて、今目の前にいる彼女の形をした彼女は、僕とコミュニケーションをとるためだけの、通信端末か何かなのかもしれないと思う。いいじゃないか、ちょっとだけ夢がある。遠いところにいて、たまに通信障害が発生して、君は僕を見たままじっととまってしまう。そして、アンテナの調子が良くなったのか、発信され続けていた君からのメッセージは3分のタイムラグを置いて僕に届く。

「ねえ、アンテナ持ってる?」

 彼女はちょっと目を丸くした。「アンテナ?」聴きなれたであろう言葉だけれど、次に彼女は「何の?」と付け足す。

「君の」

 彼女の頭についた寝癖をいじりながら、僕は笑いながら言う。すると、彼女も起きぬけの気だるい顔が、雲間からそっと顔を出す太陽のように、緩やかに顔がほころんでいった。

「ここ、ここ」

 頭のてっぺんを指差すけれど、そこには何もない。むむ、埋め込み式かな。

「何を受信してるの?」

「内緒」

 やっぱり、彼女はどこか遠くから僕とコミュニケーションをとっているのかもしれない。後ろから彼女に抱きつく。暖かく、やわらかい。彼女を感じると、そういう考えが蜂蜜のようにとろりと流れていってしまう。たぶん、耳から出て行っちゃうんだ。もう、どうでもいい。宇宙に君がいたとしても、目の前に君がいたとしても、本当は全部嘘っぱちだったとしても、こうして今君が目の前にいることが、僕にとっては何よりの幸せなんだよ。

「……うん」

 この回答に、タイムラグが2分。
[記事No.337571]Re:短編小説

黒羽
ID:[gren0705]
PC
投稿日時:07/29 19:04

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記事No.326462への返信
シリアス風味
_____

荒れ狂う炎。逃げ惑う人達。
廃墟とかしたこの街。

建物だった場所に立ち適度な距離を取り、
いつでも君の攻撃に対応できるように武器に手をかける。

「……久しぶり。元気にやってたか?」

そんな事はどうでもいいんだ。
そんな当り障りの無い答えは求めていない。

「君は僕達の敵だったの?」

帰ってきたのは、無言。
無言は肯定。

「何時から?」

「もう、ずっとむかし。覚えていない位むかし」

「…なんで?」

君は、胸の締め付けられる笑顔を作る。

「ただ、居場所が欲しかった」

なんで。なんで。
声が、出ない。

「私の存在理由が欲しかった」

言いたい事は、たくさんある。

「コレは必然だったんだよ。そう、神様の思し召しだ」

向けてくるのは、やはり、泣きそうな笑み。

「、怨むよ神様。こんな結末は求めてない」

僕はあの日のままを求めていた。

「お前は悪くない私が弱かった。それだけだ」

“じゃあなんでそんな泣きそうな顔しているの?”

「…っ」

「ねぇ、今ならまだ間に合うよ。だから、」

「いいんだ」

「何が「良いんだ!!」」

滅多に声を荒げる事をしない君が、初めて僕に、怒鳴った。
確かに君の表情の変化を僕は望んでいた。

「…良いんだ」

だからって、こんな悲しい表情望んでいない。
こんなに切なそうな、絶望した顔は見たくない。

「…いつからこんな事になっちゃたんだろ」

「きっと私がお前と出会った頃から」

あぁそうだ。僕が君と出会ったことで歯車は狂っていったんだね。

「ゴメン」

「…何がだ」

僕が君と会ってしまって。
僕が君に感情を呼び起こしてしまって。

「…ゴメン」

君を守りきれない弱い僕で。

「何度も言うがコレは必然だったんだ」

行かないで。

「私はこれから前に進んで行く。…いや違うか。前にしか進めないんだ」

「…これから進む道は荊の道だよ」

「覚悟の上だ」

「……だったらそんな顔しないでよ」

「…何を言っている?」

だって今の君の顔は何かを、我慢している顔だよ。
何かを、耐えているときの顔だよ。

「あぁ。もう時間だ。そろそろ失礼しよう。
今度は無いかもしれないがこの言葉を使わせてもらう」

聞きたくない。

「次に会う時は、戦場で」

どんどん小さくなっていく君の背中。


何時も僕が頼りにしていた、大切な相棒の背中。

「ははは、真っ白だ」

君の居ない世界に色なんて無い。

「こんなのってないよ」

本当に、怨むよ神さんとやら。
何だって僕達の邪魔をするんだ。

ただただ彼女は居場所を求めていた。僕は僕なりに居場所を探していた。
なんで、こんなにすれ違ってしまったの?

「いいよ。受けてたってやる」

君がそう決めたのなら僕が精一杯邪魔をしてやる。
次が無いなんて、言わせない。

―――――――…‥

はいカオスorz
スイマセン。一応イメージとしては軍パロです。
 
[記事No.338156]Re:短編小説

真祇
 .06F0pSY
ID:[aonisukuhana]
WX310SA
投稿日時:08/03 02:12

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記事No.326462への返信
『般若』


「何見てるんだ?」
ある展示コーナーの前でじっと動かない友人に声をかけた。
平日の博物館はひどく空いていて、周囲に人影はなくガランとしていた。
「うん? アレ」
友人が指差す方を見れば、ずらりと並べられたお面の数々。これだけ沢山あると少し気味が悪かった。
彼が差しているのはその中でも一際異彩を放つ一枚の面。

般若の面。

「……………アレ?」
「そう。アレ」
「………なんで?」
話している間も友人は此方を見ない。じっと般若の面を見ている。
熱心に般若の面を観察する小学生って、あんまりいないんじゃないだろうか。
「むかしから思っていたのだけど」
彼はゆっくりと瞬きをした。視線はそのままだ。
「みんな『怖い』っていうじゃない? でも、僕にはそうは思えなくって」
「……お前は、怖くないのか?」
彼がはじめてこちらを見た。澄んだ目が俺を映す。
「うん。………だってずっと」
けれどそれは数秒の事で、彼は再び面の方へ顔を向けた。


「泣いてるみたいに、見えるんだ」


「泣いて………?」
「うん。辛くて、悲しくて、大声で泣いてるみたい」
彼と同じように面を見上げる。
「……ほんとだ」
下がった目尻、大きく開いた口は叫んでいるようで、確に泣いているようにも見えた。
「いつも思うんだ。何がそんなに悲しかったのかなって」
鬼になってしまうほど。
そう聞こえた気がした。



それから一ヶ月程後、彼はいなくなった。この世界の何処にも。
母親に殺された。無理心中だった。
『いつも思うんだ。何がそんなに悲しかったのかなって』
彼の言葉が耳に蘇る。

……彼の目には、自分の母親がどう映っていたのだろうか。
『泣いて』いたのは、誰だったのか。


今でも考える。あの日、彼は俺に何を伝えようとしていたのか。
「………………今更、考えても仕方がないか…」
平日の博物館、彼がいた場所。
今は、俺独りで。

顔を上げる。
般若は今日も、泣いていた。



長々とすみません。失礼しました。
[記事No.338912]Re:短編小説

流梨
ID:[09029395109]
W52SH
投稿日時:08/09 02:09

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記事No.326462への返信
「わーい!タコ焼き食べるーッ!」
「お前さっきから食ってばっかじゃねぇか」
「いいじゃん別に〜。おじさん!タコ焼き1つちょーだいっ」
「へいよ!」

今俺は、彼女の真奈と夏祭りに来ている。
いつもは真奈から遊びに誘ってくれるのだが、今回は勇気を出して俺が誘った。
こんな事は滅多にない。
にもかかわらず…。

彼女は始めから食ってばかり。
もう少し勇気を出した俺の気持ちも考えてもらいたい。

「悠介ー!綿菓子あるよ!悠介も食べるよねっ」
「………」
「……? 悠介?」
「お前…さっきのタコ焼きはどうした」
「へ?食べたに決まってるじゃん」
「この短時間にか!?」

タコ焼きを買ってからまだ3分程しか経っていないはず。
…なんて早いんだ…。

その姿に、俺は少し疑問を抱いてしまった。
こいつ、俺といて楽しいのか…?
こんな風に食べ歩きをするだけなら、友達と来た方が楽しいと思う。

「真奈…」
「何?」
「お前、俺といて楽しいか?」
「へ?」
「あっ…!」

しまった…!!
つい口が滑って言ってしまった…!!

「あっ、いや…違うんだ。その…」
「……楽しいよ」
「……!!」

真奈が、綿菓子を食べながら言う。

「そりゃあ、大好きな相手といるんだから、楽しいに決まってるでしょ?」
「……!!」

ストレートに言われて、俺の体温が一気に上がった。
なんだか一気に恥ずかしくなった。

「……そうかよ」
「悠介?どうしたの?」
「なんでもないッ」

そう言って俺は、真奈から目をそらした。
恥ずかしさのあまり、返事が怒り気味になってしまう。

「あ…もしかして、照れてる?」
「なッ……!」

思わず真奈の方を振り返る。
なんて事を言うんだ…!

すると、真奈が俺の顔を覗き込んだ。
無理矢理、視線を合わせられる。

「そうやって顔赤くして、顔を斜め下に向けるのは、悠介が照れてる証拠!!」
「なッ……!!!」

そう言っていたずらっぽく笑う姿は、まるで小さな子供のようだ。
なんだか急に可愛いらしく思えた。
そしてやっぱり、恥ずかしくもなった。

「……〜〜ッ」
「あっ!!悠介!!」

思わず俺は、足を早めた。
後ろから真奈の足音がする。
あぁ…。

俺が恥ずかしがらずに『好きだ』と言える日は来るのだろうか。

*****
なんか終り方微妙ですが…。てか全体的に微妙ですが。
ありがとうございました!!
[記事No.339755]Re:短編小説

虎縞
ID:[tigerhalfowl]
TS3N
投稿日時:08/16 03:13

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記事No.326462への返信
ギャアアアス!!スレ主に誉められとる!!毎度お邪魔しまして申し訳ありません。ありがとうございます。また書き残します。

==================

「お帰りなさいテルミドール」
 この部屋には何も無かった。パリの片隅で、僅かな家電とクローゼット、スチールパイプで出来た白いベッド。俺達以外はそれしか無かった。
「ああ」
 俺達にも何も無かった。同棲しているので多分恋人なのだが、何にも無さ過ぎてそれもちょっと違うという気がした。別にイヴについて何を知りたいとも思わなかった。それは多分、俺が自身について何も話したくないからだ。彼女も俺について何も聞かず、自身についても何も喋らなかった。
 イヴが作った夕食を食べた。俺達が食べる食事は常に、家で自炊しようが外で食べようが味が無かった。彼女もそれについては頷いた。味付けは勿論してある。ただ、俺や彼女の味蕾が機能していないだけだ。
 食後、片付けをする間彼女が先に風呂に入った。片付けを済ませ煙草を吸うと、イヴが上がった。交代で俺が風呂に入った。風呂から出て電気を消すと、洗濯機を回した。部屋の電気と風呂場の電気を着け、イヴがドライヤーを使ったまま洗濯機を回そうとするとすぐにブレーカーが落ちる貧弱な家なのだ。
 適当に眠くなったところで、明かりを消し二人でベッドに入った。二人で抱き合って目を閉じた。何も無い部屋で、何も無い俺達だけど、俺達の存在だけは真実だった。うっすらと目を開けた。何も無い部屋に注ぎ込んで来る月の光が明るかった。その光に劣情を掻き立てられ、イヴの背中を指先だけで撫でた。それが合図だった。
 終わると改めて眠くなった。眠くて服を着るのも面倒になり、二人で裸のまま布団にくるまって眠りに落ちた。何も無い、このだだっ広いパリの片隅の何も無いボロアパートの中、ただ互いを温め合うようにして抱き合う俺達だけが真実だった。

=================
ずっと何かの形で残したかった話。何も無い二人の話です。退廃的なほど何にも無くていっそ清々しくそして虚しい。何も喋りたくないだけで彼らにはちゃんとパリに来た理由があるんですが、自発的に喋る事はないでしょう。真実は二人が生きていて互いを温め合う事だけです。
[記事No.339769]Re:短編小説


 FGqilH9I
ID:[rio0625]
PC
投稿日時:08/16 11:10

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記事No.326462への返信
これは、絶妙な距離感だ。
愛を知りながらも、滅多に触れることはない。笑い合うことはあっても、それは刹那。愛を囁き合っても、必要以上に入り込まない。第三者から見ればなんてもどかしく見えることだろうか。しかし当の本人たちにとってみれば、これほどよい距離感はないというのだからなんとも不思議な話である。
愛し合っていることに変わりはないという、どこか達観した愛し方。逆に相手が急に自分を求めてきたら、それこそなにかあったのだと思い知らされるという。そう言うときでさえ、笑って相手が求めるさまを演じる彼らは、やはり愛し合っていると認めざるを得ない。
そんなことを考えながら、自室の窓を開けぼんやりと頬杖をついて外を眺めていた晴香は、天候の変化に小さく「あ…」と呟いた。先ほどから薄暗く覆っていた雲。昼を過ぎ、夕刻に向かう今頃になって水を落としだしていた。音は優しく柔らかく、細やかな雨粒といえどもこれほどの激しさならば、おそらくしばらくすると大地に水溜りをいくつも作り上げるだろう。立ち上がるとテラスに向かい、干しっぱなしになっていた洗濯物を取りに出る。そこでふと、気付いた。
二つ並んだ傘が大学から出てくるのが見えた。そしてその二人は紛れもなく、先ほど晴香自身が考えていた彼らだった。歩調を合わせてくれない彼の後ろを足早についていく彼女。二人で帰っているなんて稀である。珍しい、そう思って思わず彼らに見入った。
恋人同士なら、一つの傘に収まればいいものを。そうすれば彼も彼女の歩調に合わせざるを得なくなる。ただ、それをしないのが彼らで、しないことを苦に思わないらしい。遅いよ、君。そう言いたげに止まる彼に、必死についていこうとする彼女はあまりにも健気だ。私はそこで彼らを眺めるのをやめ、部屋に入った。夏にも関わらず半袖で肌寒いと感じる気温。ホットコーヒーを作りながら、そこでもう一度あることに気づいた。
そういえば彼女、今日は大学の講座をとっていないはずだ。そして二人で帰宅の珍しい光景。そして突然の雨。
途端に全てが繋がって、小さく笑うとコーヒーを飲みほした。



参加させていただきました。
またできれば参加させていただきたいです。
失礼しました。
[記事No.340825]Re:短編小説

まなか
ID:[shiroikotori]
PC
投稿日時:08/24 22:31

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記事No.326462への返信
〈オトメゴコロ〉

 真実は一つだけ、なんてどこかの小説の名探偵が言うことで、刑事事件に関わることさえまずない凡常の私たちにとって、 〈ホントウ〉 とは何重にも重なった曖昧な物である。
 私たちの 〈ホントウ〉 とはもっぱら、密室で起こった殺人とかに展開される、物理的な理に支えられた推理は通用しない、ココロの中のことだから。
 しかも私は女だから、胸に秘めるのは 〈複雑〉 の代名詞オトメゴコロ。
 そんな私たちの心をひらくには、銀行の金庫をこじ開ける犯罪技術より高度な手法と、柔軟さとセンスが必要で、その思考回路は名探偵はもちろん、お偉い学者様も推理できない。
 迷宮ラビリンスや、怪奇事件の謎、手品師の魔法よりも難解煩雑不思議、それが私たちだ。
 ――携帯をぱちりと畳んだ。二つ折りにしても私の手の平より薄い携帯は、スタイリッシュだけど、なんでもかんでもコンパクトにすればいいってもんでもないと思う。だけどブ厚い携帯はダサイ感じがする――って、みんな言ってる――し、旧型、って響きがイヤだからこれにしている。色だけはお気に入りだ。目に優しい色のピンク。
 メールはカレシからだった。最近デートの誘いがしつこい。焦っているみたいだ。私がツレないから。……わかっていて速く返信してあげない私は、性悪なんだろう。
 よそよそしい振る舞いをする理由は、単純。ウザったくなってきたからだ。そう言うとみんな気安く「別れれば?」なんていうけど、まだ好き。なんだろう、 "束縛がウザったい" ? でも束縛されないのもそれはそれでムカつく。
 要は恋の火照りが冷めてきて、始終ひっついていなくてもよくなったのだろう。恋愛の絶頂は、両思いになった瞬間。結婚ってのもあるけど、私はそれをまだ知らない。いとこのお姉さんのウエディングドレス姿はとっても綺麗だった。いいなぁ、結婚。
 したくないけど。まだ。
 携帯を見下ろした。返信を打ち始める。
 相手の、愛情へ縋る気持ちに付け込んで、好意を装い酷いことを言う――そういうのが一番人をいたぶって傷付けるのだと、わかってはいるけれど。
 短いメールを送ってまた携帯を閉じた。持ってないと落ち着かないんだ。握り心地はよくない。やっぱりもうちょっと厚いのがいいなぁ。
 なんにしよ、私は追いかける恋愛が合うタチなのだろう。愛情が薄れていくのは少しさびしいから、今度はそっけない人を好きになれたらいい。でもあまり報われない恋がキライでもあった。疲れるし。
 とりあえず、まだ、好きだ。
 そう、数分のあいだにカレシへの気持ちを纏めると、明日友達と行くカラオケのことを考えだした。

 * * * * *

 絶賛思春期。

 一人称は心理描写がしやすくて好きです。三人称派だけど。
[記事No.342267]Re:短編小説

虎縞
ID:[tigerhalfowl]
TS3N
投稿日時:09/06 04:21

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記事No.326462への返信
 羨ましかった。
 だってレースルは綺麗で可愛くて、こんな所にいるのに心も素直で洗練されてて……。
 だから、私はレースルを。

 =南の国行きの列車=

 ゴトゴト、と列車は走っている。私や他の女の子や、別の両にいる男達を乗せていつものように。私は窓から外ばかり見ていた。良く晴れてた。多分、家畜用の車両だろうこの私達の両の窓は、窓なんて言えないんだろうけど。今ここにレースルはいない。
 目を閉じてしまうと耳が冴えて、レースルが責められてる声も聞こえて来そうな気がして、私はただぼんやりと外を見続けた。レースルは可愛いから、だから男達はレースルばかりを欲しがった。私はレースルが汚れていくのが嫌だったけど、荒っぽい男達に責められるのは嫌で、そんな臆病な私も嫌で、でも不細工な私にはレースルの代わりに手を上げても、男の手はのべられなかった。
「ただいま、シシィ」
 気の遠くなるくらい外を眺めていると、レースルが帰ってきて一番に私に話しかけてくれた。一番によ!そう思うと飛び上がって叫びたくなった。あぁ、天使みたいに綺麗なあのレースルが!
「お、おかえりなさい、レースル。乱暴されなかった?」
「ううん、大丈夫。バリーさんだったから」
 滑らかな肌の肩から零れて落ちそうなスリップの紐を、レースルは直した。
 他の女の子は、冷たい床に直に投げられたマットに横になって寝ていて、私とレースルは二人きりで小声で話した。終わった後お風呂に入っても来たレースルは、温かい肌をしていて、今にも触れ合いそうなくらい近くにいるとその匂いにくらくらした。
 バリーさんは気弱で、自分で求めてくるくせに、終わると独特の調子でゴメンねゴメンね、と繰り返してお風呂に連れて行く。それが可笑しいんだから、とレースルは笑った。私はそんなバリーさんはレースルを求めに来る時にしか見た事がなかった。
 二人きり、声を殺して、レースルの笑い声を聴きながら甘い匂いに酔って喋っていると、まるで本物の恋人になったみたいでドキドキした。
 列車は、私達を乗せて、聞いただけで降り立った事もない南の国の街に走っていた。


……………………
 唐突にガールズラブが書きなくなってこんな話。うん、虎縞に向かないと改めて思い知りました。

 度々お邪魔しまして申し訳ありません。しばらくここには書かないようにします。今回のは色々あって自分の家には書けない話だったので失礼しました……
[記事No.343504]りんご

みなみ
ID:[megalomania0]
PC
投稿日時:09/20 21:42

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記事No.326462への返信
 一本の大きな大木に林檎が一つ実っている。僕はこの林檎の事を毎日眺めている。下から眺められる事に林檎は少し抵抗がある様で、顔を真っ赤にしている様子が可愛かった。毎日僕はこの大木に水と肥料を持ってくる。そのお蔭か、初めは小学生位だった林檎も、今は立派な女の子だ。雨の日も風の日も、台風が来た日だって僕は林檎の傍を離れなかった。もし僕が離れている間に地面に落ちてしまったら、林檎は猫や虫に食べられてしまうかもしれない。ただでさえ毎日、林檎に近付く虫を払うのにも苦労するのだから。
 雨が降ると林檎は、未成熟で艶やかな体を打つ水を、気持ちよさそうに受け止める。根から吸収した水分を体へと送り込み、より肌を瑞々しくさせる。太陽の光を受け、少し肌を焼きながら、のびのびと光合成をする。温かい日差しについつい僕まで眠ってしまいそうだ。僕が眠ってしまうと、そんな林檎の可愛い寝顔を見る事が出来なくなる。酸素を取り込んだ葉は、木の枝を伝い、林檎の隅々まで新鮮な空気を浸透させる。ゆっくりと深呼吸しながら、体に行渡る酸素を十分に味わい、頬を少しだけ赤くさせる。
 僕は林檎の事を愛している。林檎も僕の事を愛してくれている。今はまだ林檎は木の枝に実っている状態だから、キスも何も出来ないけれど、林檎との会話だけでも、僕は十分に満足できる。
 林檎の体が赤い。そろそろ熟しきる頃だ。成熟した林檎は自ら地面へと降り立つ。木の枝を離れ地面に足を付けるのだ。もうそろそろ林檎が落ちるかと思ったときに、虫達はやって来た。奴らは林檎を囲む様にして、じっと落ちてくるのを待っている。僕は必死で虫達を払いのけ、林檎に近づけさせないように、する。林檎も不安な眼をして、僕を見ている。
 虫達はしぶとくも林檎に近づいていく。中には数匹、林檎の体に付いた奴もいたけれど、僕は林檎の悲鳴を聞いて直ぐにそいつらを払いのける。木の葉はざわめき、まるで怯えて泣いている様でもあった。彼女は手をぎゅっと握り締め、瞼をしっかりと閉じている。唇も内側から噛み押さえている様で、酷く辛そうだった。
 僕は必死になって虫達を払いのけていた。そうして、何百匹と言う虫達を払いのけた後に、そいつらの親玉とも思われる虫が現れた。僕のような人間くらいの大きさの、ジガバチの様な奴だ。巨大な蜂は僕に向かって尻の針を向けてきた。針は気味悪く脈打ち、先から透明度の高い青白い液体を垂らしている。
 僕は本能的に勝てないと思った。
 すると、後ろの方から物音が聞こえた。見ると林檎は自らの足で地面に立っていた。成熟した体に、ほんのりと赤い肌。きめ細かい長い髪に、降り注ぐ雨粒よりも儚い瞳。砂糖菓子の様に繊細で、宝石の様に美しい林檎が木の枝から離れ、地面に降り立った。
 僕は直ぐに林檎に駆け寄り、彼女の肌に触れる。初めて触れた林檎の肌は瑞々しく、柔らかくて、日の光を一杯に凝縮したみたいに、温かかい。彼女の姿を見た虫達は、皆見とれてしまった様で、食べる事を諦め、来た道を戻っていく。僕は林檎のと手をそっと握ると、林檎の脈が静かに伝わってきた。それはとても心地よく、心休まる。今まで林檎を見てきた疲れが出たのか、僕は足元から崩れ落ちた。倒れた僕の横に林檎はそっと横になり、僕の頬に手を添えた。真っ青でどこまでも広がる空の下で、林檎は光合成ではなく、自分の口で、自分の肺を使って初めて大きな呼吸をする。葉から取り入れる酸素ではなく、自分で直接肺に送り込まれた酸素を、林檎はゆっくりと吐き出した。
 僕はゆっくりと眼をつぶる。僕と林檎は、そっと、眠りに付く。
[記事No.343732]Re:短編小説

美里
ID:[want2love]
821SH
投稿日時:09/22 21:55

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記事No.326462への返信
※観覧注意

【此ノ花】

僕はそっとソレを襖から覗いていた。明くる日も、明くる日も。
あの子は美しい。成人した僕よりも、恐らく2才ほど下だけれど、それはそれは愛に満ちた瞳を持っていた。そしてその眼差しを、ソレらに向けていた。今はソレ、単体だ。
あの子は今は裸体だ。いつもそれをするときは肌を露出させ、ソレと一緒に深い桶のようなものに入る。それが僕の好奇心と嫌悪感を同時に奮い立たせる。
僕は、彼女に惚れていた。
「あら……今日もまた来たのね」
彼女は振り向かずにソレの腕に湯をかける。部屋の中とはいえ隙間だらけでは、視界が悪くなったりしない。だから僕はもう身を隠せないことを覚悟していた。
「……ごめん」
「別に、珍しかったら見ていってもいいわよ?」
見世物じゃないのはわかってる。だから上手く返事も返せなかったし、気味が悪いと思うのだ。
これをやっているときの彼女は綺麗だ。だけど異常だからやめてほしい。これが僕の本音。
「……なぁ、なんでこないなことやってるん?こいつら汚いで」
未だに抜けない方言を意識することも忘れて、僕はどうやったらこれをやめてくれるか考えた。彼女は振り向いた。その胸に、片脚のない武士の死体を抱いていた。あの子と呼べる人は、笑っていた。
「それでも私には立派な性の対象よ」
性的交錯――あの子は死体をこよなく愛する。
「最初はこの人たちの罪を流すだとか、棺桶に入る前だからとか、いろいろ考えてたけど、今はこういう理由なの」
あの子の異常性愛の前では、僕など無力だ。
あの子は死体の身体を撫でるように洗うと、僕をジッと見詰めた。そこには一切の愛もなかったが、何かを見定める気配は感じとれた。
僕にだってそれが何かわかってる。だから踵を返して逃げ出した。
僕は、彼女に惚れていた。
家に駆け込み、研いだばかりの包丁を手にする。それを手にしてまたあの部屋に戻った。彼女はもう死体から離れていた。にっこり笑う綺麗な顔。
好きだ……
「おいで――綺麗になりたいのね」
僕は彼女の目の前にひざまづいた。彼女の優しい目は今、確かに僕に向けられている。
嗚呼、愛されているよ。
心臓を一突き。僕の血液が目の前の彼女を汚していく。
幸せを今この手に、掴んだ瞬間。
彼女もあの子も、笑っていた。

僕は彼女に惚れていた。
あの子は僕に惚れる。

*

湯灌のおはなし。それでいてネクロフィリアっていうんだっけ、そんなお話。
死体だけしか愛せない女を愛した話。

凄い話を書いてしまった……
これはイカンだろーって思われましたら、スレ主様消してやってください(笑)
[記事No.351323]Re:短編小説

城平ろくむ
 RSyy8bFk
ID:[ranean]
CA3E
投稿日時:10/22 00:55

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記事No.326462への返信

久し振りに筆を執ったので

お題:幼馴染×蛞蝓


『僕とアイツ』


 僕は蝸牛。

 家という名の殻に閉じ込もっている。典型的な引きこもりというやつだ。この世界のすべてが嫌になって、自分の世界に入った僕だったけれど、それでも幼馴染のアイツだけは今でも僕に構ってくる。それは僕も嫌ではなかった。

 僕が蝸牛なら、アイツは蛞蝓。

 蛞蝓好きが高じて大学に行って研究までしているくらいだし。アイツは僕の家に来ては外の話をしてくれるのだが、八割くらいは蛞蝓の話だったりする。
 例えば、蛞蝓はビールが好きという話。何故か寄ってくるそうだ。そんな事を延々話し続ける。僕は蛞蝓をあまり好きではないけれど、話をするアイツの輝く眼が好きだった。

 アイツは今日も僕の部屋に来た。
「お前、友達いないのな」
「引きこもりのお前よりましさ。話せる奴は大学にもいるから」
 こうやってからかい合えるのも、幼馴染ゆえか。
「なぁ、お前知ってるか?」
 アイツがその文句を言うと、いつも蛞蝓の話が始まる。
「いいや」
 僕もお決まりの答えを返すのが常だ。

――蛞蝓にも殻や足がある。

 アイツは言った。動きは遅くとも、その足のようなもので一歩一歩進んでいる。蛞蝓の殻は、蝸牛のそれが小さく進化したものだそうだ。
「自由に動くため」
 だと。そう、アイツは言った。
 その言葉を聞いた時、何故か僕の頬に涙が伝った。
「どうかしたのか?」
 蝸牛の殻に閉じこもった僕は、きっと蛞蝓であるアイツの自由さを羨ましく感じていたんだろう。今の状況を心のどこかで改善したいと思っていて、それが涙として溢れ出たのだ。
 この殻を出る時なのかも、しれない。
 そう思った。


 僕は蝸牛。
 殻を取った蝸牛は死ぬらしい。
 だが少しずつでも僕は前に進んでいる。蝸牛は蛞蝓にはなれないけれど、殻から出れば歩いていける。
 確実にアイツは蛞蝓のように歩いた跡を残して僕の前を行っている。あの日アイツがしてくれた話が、僕を動かしている。
 アイツにそんな意図があったのかどうかは今もわからないけれども。

 僕は今、蝸牛の研究をしている。
 蛞蝓のアイツには適わないかもしれないけれど、いつか張り合えるようになりたいと思っている。
 蝸牛と蛞蝓、俺とアイツは今も仲良くやっているよ。




「僕」も「アイツ」も性別不明だとおもしろいかもしれませんね
また書いたらきます
[記事No.355921]Re:短編小説

椎藍
ID:[rio0625]
PC
投稿日時:11/07 23:43

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記事No.326462への返信
届かないもどかしさは苦しみに近いものがある。届かないのであればあきらめてしまえばいいものを、あともう少し手を伸ばせば届くのではないかなんて淡い期待を抱いて、しかしその手は虚空を掴むばかりで何も得られない。学習しろよ。そう何もない掌を眺めて自傷的に笑うのは、もう何度も行われた光景だ。それでもやはり手を伸ばすのは、学習能力がないからか。否、あるにはあるが、届かないその事実を認めたくないからだ。
彼女は俺に気付かない。同じ教室という空間にいる俺の感情に気付かない。言葉を交わす機会なんて週に一度あれば多いほうだ。目の前を通り過ぎて行く彼女を見て、声をかけようと手を伸ばす。
「―――」
声は出なかった。出るはずもなかった。伸ばした手も自然と机の上に戻ってきた。女々しく重いと自覚している。それでも視線が追ってしまうのは仕方のないことだろう。声をかける勇気がないのではない。声をかけて、何を話せばいいのか。それが分からない。知りたいことはたくさんあるが、自分はそれほどがっつく性格ではなく、なぜか彼女の前に立つといつもの余裕が持てなくなる。だから遠巻きに、遠巻きに、眺めてしまう。これを臆病者と人は言うのだろうか。孤高を気取った狼が、どもってしまえば笑いの種になるだろう。俺はまだ、自分のプライドを投げ捨てられるほど強くはないのだ。
これを愛というのなら、なんて残酷なものだろうか。
これを恋というのなら、なんて無様なものだろうか。
まるで彼女を愛するなと、そう警告するように。それでも視線はやはりぐるりぐるりと回って彼女へ。彼女はいつの間にか俺の前の席に座ると、次の授業の準備をする。彼女の体が動くたびに、彼女の髪が肩から滑り落ち、左右に流れる。
俺はもう一度、静かに手を伸ばす。比喩的にも現実的にも。しかし途端に鳴った予鈴により、移動教室のために彼女は立ちあがる。そしてやはり、俺の手は彼女に届く前に虚空を掴む。流れる髪に触れることさえできない。俺は掴んだ掌を開く。開いて、いつもと同じように何もないことを確認して双眸を細める。
「武田、行くぞ」
友人の呼び掛けに応じて、俺は静かに立ちあがると、他の人たちを追うように友人と教室を出る。結局俺は何もできず、何も起こせない。だから苦しくて、辛い。息が詰まってしまいそうなほど苦しくて。
きっと人は、人を愛しすぎて死ぬことができるだろう。



以前、心の名前で投稿させていただきました、椎藍です。
今回で二度目の投稿になります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。失礼します。
[記事No.357619]Re:短編小説

かんな
ID:[ballet03]
PC
投稿日時:11/13 21:10

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記事No.326462への返信
雲がやけに灰色に見えた。
よく見るとそれは煙だった。
彼女を閉じ込め、蝕み、尚上に向かうそれはしかし、風に当たれば簡単に揺らぐ。

思うところがあった。
一体、彼女の一生はなんだったのだと。

僕と彼女は呼び捨てはおろか、名前で呼ぶような関係ですらなかった。
話したのも数えれば両手で足りる回数で、こと悲しむ程の近さではなかったのかもしれない。

(それでも僕は彼女について、知りすぎるくらい知っていて。)

彼女はあの日、何を言われたのだろう。
彼女によく似た女性。
彼女に全てを与え、奪ったあの人は、あの美しい笑顔で彼女に何を告げたのだろう。

あの人は今日も姿を現さない。
罪悪感か、無関心か。
どっちだって構わない。
どうせもう、彼女がこの無惨な光景を見ることはないのだ。

思うところがあった。
あの人に生み落とされた彼女があの人の言葉により死ぬことは、果たして幸せだったのだろうか。

僕と彼女はキスはおろか、手を繋ぐような関係ですらなかった。
しかし僕は覚えている。
彼女の涙に、確かに温度があったのを。

辛かったのか。
悲しかったのか。
悔しさやら憎しみかもしれない。
若しくはもっと、僕の知らない感情。

彼女の器からじりじりと、焦がれるように溢れたそれらは、そして彼女を殺した。
無への回帰。
或いは剥離?

思うところがあった。
彼女は最期に何を思ったのだろうか。

愛だろうか、絶望だろうか。

喜劇とも悲劇とも取れない(しかしどちらにも取れる)彼女の一生は。
16という短く、細い彼女の一生は。

果たして。


**********************************************************

彼女=クラスメイト。
あの人=彼女の母親。

四度目の投稿です!スペースありがとうございました!
[記事No.358631]蜂蜜少女

みなみ
ID:[megalomania0]
PC
投稿日時:11/17 23:27

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記事No.326462への返信
 ベランダに垂れた二枚のカーテンの隙間から、朝の日差しが零れ入ってくる。直線を描いて降りてきた日の光を、彼女はその体で受け止める。彼女に侵入した光は、彼女の中で幾度も乱反射し、数え切れないほどの冒険を終えてやっと体外へ漏れる。それによって、彼女の美しい、黄金色の肌が輝いて見える。
 信じられないことだろうけれど、彼女の皮膚は、甘い。
 濃密で溶けるような甘みは、唾液を一瞬で支配して、次に口の中全体に回る。歯の隙間全てを埋め尽くし、舌の奥の奥まで浸透して、喉から伝う食道、気管までをその甘みで浸してしまう。
 香りは鼻腔をくすぐり、鼻の中とは言わずにその表面までも包み込むようにして、僕に香りを届ける。鼻だけじゃない、脳自体がその香りを鼻同様に感じている。脳が理解するのではなく、刺激としてその香りを掴む。
 黄金色で出来た彼女の体は、つまり蜂蜜で出来ていた。体の奥から溢れ、流れることを止めず、常に彼女は蜂蜜を生成して生きている。質量保存の法則を一切無視して、彼女の内側から生まれる蜂蜜は、芳醇な香りと甘みを含み、流れることをやめない。
 彼女の頭の天辺から溢れ生まれた蜜が、髪を降りて頬を伝い、首筋へ流れ、鎖骨にたまり、なだらかな胸の曲線を描いて、その天辺にある乳頭を滑る。柔らかい腹部の中心、臍を経て、腰を下り、下腹部の繁みで幾つにも分散し、両の脚の間にて再び巡り合い、脚を伝い指の隙間に落ちていく。
 毛の一本一本から、眼球に至り歯を含み、骨の髄から内臓の全て、巡る血液までもが彼女は蜂蜜で出来ていた。形を保つ構造は不明。生命を維持する方程式すら未知。彼女が何処から生まれ、如何なる理由で蜂蜜であるのか、それは誰にもわからず。ここにこうしていること自体不思議なことであるが、僕はそんな些細なことはどうでもよかった。
 彼女の肌を舐め上げる。溢れた蜂蜜の全てを丁寧に、舌で掬い取っていく。液体である彼女の肌の形を保ちながら、表面を滑る蜂蜜のみを食すのは、如何せん難しかった。
 彼女がくすぐったそうに眉をひそめ、笑った。その表情の可愛さに、僕は嬉しくなって、少しずつ舐め取る量を増やしていった。舌に力を入れすぎず、前歯を当てないように、彼女の肌に舌を這わせていく。脇腹から脇にかけて舐めあげると、彼女は大きく体を揺らし、ケラケラと笑った。
 長い髪を揺らすと、毛先から蜂蜜が雫となって宙に散った。その黄金の雫が太陽の光に投げ出され、一瞬大きく輝いた時、まるでこの世界中が輝いたかと思えるほどに眩しく、僕の瞳を惑わせた。
 指先から肩にかけて、少しずつ、速度を上げず、焦らず、ゆっくりと舌を這わせる。舌が掬い上げた蜂蜜が口内に溜まり、僕はその甘さで眩暈を起こしそうになった。肩から首筋を経過した舌を、彼女の唇に持っていく。
 世界で一番甘くて、世界で一番美しいキス。彼女の唾液は全て蜂蜜であり、蜂蜜に犯された僕の唾液もそれ同様の甘さがあった。小さく、甘いと洩らした彼女。頬を染めても、その色は黄金でしかなく、けれど、はっきりと僕には、彼女が今耳まで真っ赤に顔を染めていることがわかる。
 永遠に美しく、永久に甘い僕らの恋は、何処までも黄金色だった。
[記事No.360105]Re:短編小説

虎縞
ID:[tigerhalfowl]
TS3N
投稿日時:11/23 00:08

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記事No.326462への返信
=キメラマチック・ツイン=

 二人は双子だった。男の子と、女の子の双子だった。
 中学に上がる前、他の子供達と同様に生まれて初めての入念な身体検査を受けた。
 その後検査の結果を聞きに、父親は病院に行った。
「特に、健康上問題のある点ではないのですが」
「何か?」
「お父様はお二人の血液型はご存知ですか?」
「O型ですね、二人とも」
「だからこそ発見されていなかったのだと思いますが、二人は遺伝学上で言う、キメラというものです」
「キメラ……」
 双子は血液キメラである。
「多胎児に起こり得るのですが」
 健康上問題はない、と念をおして医師は血液キメラという状態を説明した。
 話は、二人が胎内にいた頃に遡る。
 双子は一つの胎盤を共有して成長していた。胎盤は自分で血液を造れない胎児に代わって血液を作り、二人に送り込んでいた。胎盤にはそれぞれの血液の元となる細胞がある。やがてそれぞれの体に移り血液を自発的に造る為に、遺伝情報を乗せたその細胞は混ざらないようになるべきである。
 ところが、二人の血液を造る細胞は一つだけの胎盤を通しているために移動可能なものなのだ。
 男の子は女の子の造血液細胞を発達途上の骨髄の一部に定着させ、女の子は男の子の造血液細胞を同じくその骨髄の一部に定着させた。そうして生まれた双子は、入れ違いになった造血液細胞を動かし、互いの血液を常に混ざり合わせている状態になった。
 一つの遺伝子を持った個体の中に違う遺伝子の細胞を存在させている事を、キメラという。
「……問題はないんですか?」
「問題はありませんね。お二人の場合ほんの少しずつですし、そうなってしまっている多胎児のペアは驚くほどの割合ではありません」
 それ以外に特筆するような異常も無い、と聞いて、父親は不思議な気分で家に帰った。
 家に帰ると、双子がいる。女の子は反抗期が始まっていて、挨拶もそこそこだった。
 この二人はそれぞれの一部を少しずつ同じくした双子だ。
 運命という言葉を、父親は久方振りに噛みしめていた。



…………………

 お久しぶりで、こんな話です。ウィキペディアで血液キメラというのを見て、あぁなんか書かなきゃと思ったので。
[記事No.362032]Re:短編小説

りお
ID:[bell4724]
SH905i
投稿日時:11/29 15:56

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記事No.326462への返信
久々に参加。
………………


可愛い可愛い僕だけの彼女。
大好きで守りたくて触れていたくて、忙しく洗濯物を畳む細い体を抱きしめた。ぎゅう。子供じみた音と共に、彼女は小さく悲鳴を上げる。高いその声に何だか嬉しくなって、シトラスの香りの髪に頬を擦り寄せた。あんまり可愛いから極力優しさを込めて背中を撫でると、掌に何か固い感触。驚いて頭一つ分下にある彼女の顔を覗き込むと、彼女はほろほろと泣いていた。

「私、天使なの」

泣きわめく彼女に圧倒されながらも再度強く引き寄せ、さてこれからどうしたものかと考えを巡らせる。真偽は分からないが、例えば彼女が天使だとして僕は一体何をすればよいのだろうか。どこかの機関に売り飛ばす? 馬鹿な、彼女がいなければ死んでしまう僕にそんなことできるものか。しかし、困った。
ひっく。嗚咽を零して彼女が僕の胸を押す。そのあまりの弱々しさに切なくなってきたが、彼女に反発する気など毛頭ない。大人しく体を少し離すと、泣き腫らして赤に染まった目元が見えた。ああ、苦しい。彼女が泣いている。それだけで僕はこんなにも苦しい。

「見ていてね」

呟きが耳に届いた。と思った途端、彼女は上着を脱ぎだす。何をやっているんだ、確かに僕たちは付き合ってはいるけれどそういうことはまだしないでおこうと約束したし、いや、これは彼女なりのお誘いだったのではないか云々。もちろん想像したようなことはなく、上半身を守るのが下着のみになった彼女が微笑んだところで何を見てほしいと言ったのかようやく理解した。
雪のように真っ白で綿菓子のようにふわふわな何かが彼女の背中から生えている。昔どこかの美術館で見た、何かの教科書に載っていた、幻みたいな羽。僕が両手を広げたよりも大きなそれらは、はたはたと申し訳なさそうに揺れている。

「……綺麗だ」

思わず流れた言葉を聞いて彼女はまた涙を流した。そして未だ唖然とする僕に、軽くキスをしたのだった。


………………
最近改行が億劫です。
ありがとうございました。
[記事No.362058]Re:短編小説

くろ
ID:[ngyo0]
PC
投稿日時:11/29 17:08

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記事No.326462への返信
参加です。
――――――。。。
黒猫だ
今私の目の前(正しくは足元だが)に黒猫がいる
毛並みが良く、真っ黒い黒猫が。

逃げないのか?  逃げない。 餌が欲しい?
とりあえず私は逃げるように走った。 ついてきた。

私は猫が好きではない。ましてや黒猫だなんて
「お前腹が減っているのか?」
人間でも無い生き物に話しかける私もどうなんだか。
「ニャア」    猫よ人語を話せ。 欲しいのかそうでないのかちっとも分からない

とりあえず鞄に入っていたパンを上げることにした。さっさと何処かへ行って欲しかったから。
すると猫は凄い勢いでパンを食べ始めた。途中、もっと欲しいかのような眼でこちらを見上げるので、その度にパンをちぎり、与えた。

パンがない。どんだけ腹が減ったんだ。
「もう無いんだ。ごめんな」
猫に謝る必要などあるのだろうか、そう思った時。
「こちらこそ」

猫も人語を話すのか?それとも先ほど(猫よ、人語を話せ)と思ったからか?いや、この猫は猫又か、化け猫か?
テレビで人語を話す猫というのは見たことがあるが、このようにはっきりした人語を話す猫など、何処にいるか。

私は逃げ出した。怖かったから?多分、そう。
私は家に帰ったあと、今日起こった事を忘れる為に、寝た。


翌日、学校の帰りに黒猫の集会を発見した。
その黒猫の集団私の足に擦り寄ってきた。
とりあえず、パンをあげようかなと、思った

――――。。。
長文すみませんでした・・・

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