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森のフォーラム

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Re:短編小説
癒里
[ID:notlook4279]






八月末日を直前にして。

私はとんでもないことに気付いてしまった。

「私、まだスイカ割りしてないや」

更に言うなら花火もしてないし、セミ狩りもしてない。

「セミはやめてやれよ永瀬。あいつらもう追い込み入ってんだから、そっとしといてやれって」
「追い込み入ってるのは私もですよ」
「そう、その自覚を持ってくれ。お前のせいで俺はこのクソ暑い中、お前に補習するために出勤してんのよ?」
「ぁ、プールも行ってないや」
「聞けや」

そう言って私を小突くのは、私の担任であり何故か恋人である藤堂先生。

私は、夏休みの宿題を見てもらうために八月中頃から学校へと赴く生活を続けていた。

「宿題のためとは言え、悲しすぎる生活ですよね」
「俺に会えて嬉しかろう」
「かろ、けれ、コロ」
「今イヌ混ざってたぞ、イヌ」
「先生、スイカ買いに行こう、スイカ」
「聞けや」

そう言いながらも、この補習生活に飽き始めていたのは私だけではなかったようで。
先生は、夏の間に伸びた髪をがしがしと掻きながら、私を見下ろす。

「スイカ買ってどうすんの」
「割ります」
「どこで」
「先生ん家」
「やだよベタベタになんじゃん」
「じゃあ下の駐車場でも良いですよ」
「何で割るの」
「野球部のバットを拝借して帰りましょう。あの子にとってのこの夏が、球に当たることなく終わっては可哀相です」
「お前それ山口先生にはゼッテー言うなよ?」

山口先生は我が校の野球部顧問で、この夏一番泣いたであろう先生である。

「見事なクソ試合でしたものね」
「お前たまにエグいこと言うよね」
「だから付き合ってるんでしょう?」
「学校ではそのこと言わないのー」

だったら早く私をスーパーに連れて行きなさい。

「そしてスイカを買い与えるのです!」
「はいはい。あとは?」
「花火!」
「安上がりなお嬢さんだこと」

助かるわあ、なんて言って笑っている先生をよそに、私はさっさと帰る準備を整える。

「先生も早く、準備して」
「そんな急がなくたって良いでしょ」
「ダメですよ」

そんなのんびりしてたら、夏休みが終わっちゃう。

「まだまだ夏はこれからなんですからね」

楽しむには、少しスタートが遅すぎました。

だから。

「早く行きましょう!」

最後の夏を、楽しむために。











『スロースターター』

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