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森のフォーラム

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Re:短編小説
真祇
[ID:aonisukuhana]

『瑠璃色の夏の日に』


 夕食後にテレビを見ていると、不意に鳴り響いた電話が、彼女の訃報を知らせた。
 何を言われたのか、わからなかった。
 ただ、テレビの中でなにやら騒いでいる芸人の姿が、ゲラゲラとうるさく響く誰かの笑い声が、ひどく滑稽だと思った。


 通夜が済み、告別式が終わっても、僕は泣かなかった。

 その翌日から、僕は僕の『日常』に戻っていた。
 自分の中に出来た大きな欠落には、気付かない振りをした。




 いつもと同じ時間が過ぎてゆく。
 ただ、君がいないというだけで。

 それ以外は、以前となんら変わらずに。
 静かに時が移ろうてゆく。


 だから、
 もしかしたら、と、期待してしまう。
 君はまだ、この世に在るのではないかと。
 ただ少しの間、ふざけて隠れているだけで、そのうちひょっこりと、何事も無かったかのようにまた僕の傍で笑っていてくれるのではないかと。
 無意識に、君を探した。
 何度も、

 何度も。


 けれど、たった一箇所だけ、探せないでいる場所があった。
 はじめて君と出会った場所。
 僕らだけの秘密の空間。
 僕と君との特等席。
 それは、
 神社の石段の中ごろで脇に延びる獣道に入り、進んだ先にある、ほんの少し開けた場所。
 僕らが見つけた、誰も知らないその場所で、

 春にはお花見をして、
 夏には花火を見て、
 秋には紅葉狩りをして、
 冬には雪だるまを作った。

 ずっと一緒だった。春も夏も秋も冬も、ずっと。
 この場所には、君との思い出が多すぎた。

 だから、探せなかった。探すことが怖かった。
 もし、君が此処にもいなかったら、


 僕は一体、何所を探せばいい…?


 それでも、僕は君を探さずにいることなど出来なくて。
 とうとう、この場所に来てしまった。
 走って来た所為か荒い呼吸のまま、君の名を呼ぶ。

「ルカぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!」

 何度も、何度でも。
 何度だって、呼ぶから。

 ルカ
 ルカ

 ……瑠夏


 僕を、呼んで。

 そうすればきっと、

 きっと飛んでゆくから。




『      』




 誰かに、呼ばれた気がした。
 泣きたい程に懐かしく、愛しい声だった。
 ふっ、と振り返る。柔らかな風が吹いて、くるぶしまでの長さの下草がさらさらと揺れた。

 夕日の光に赤く色付く世界に、けれど誰もいなかった。

 風が吹いて、木陰が揺れ、光が踊った。
 空は赤から群青色へとグラデーションがかかり、雲が夕日の赤に染まっていた。

 この光景が好きだと言った少女は、そこにはいなかった。

 僕ひとりだった。



「………ああ、そうか。………君はもういないのか……」

 ゆっくりと瞬き、高く澄んだ空を見上げた。


「さよなら、瑠夏」


 そうして僕は、誰よりも大切な少女に


 永遠の別れを告げた。






こんばんは。投稿は2回目…だったと思います。
また訳のわからない話で申し訳ありません。

もっとも当てはまる一つを選択して下さい。


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