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森のフォーラム

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Re:短編小説
虎縞
[ID:tigerhalfowl]
 毎日夕方と夜の真ん中あたりになると、貴方は学生を沢山引き連れて帰ってくる。私と猫達に挨拶をして、学生さんもそうして、リビングに置かれた貴方のお気に入りのソファに猫を膝に私とゆったり腰掛け、研究室でも終わらなかった話の続きを日がとっぷり暮れるまで続けた。研究の話である時もあれば、誰かの悪口を、先生である貴方も一緒に悪戯っぽい笑い声を交えながら楽しくした。貴方のパイプのと、学生さんの吸う煙草でリビングは煙で真っ白になりそうで、貴方が作った喫煙時は窓開放、とのルールをみんな守ってくれているのでそうはならなかった。
 この家に越してから、貴方は常々学生達に喧伝して回った。
「お前ら、そのうち子供作るからな。その時になったら我が家は喫煙禁止だ」
 ねぇ、貴方もその時にはパイプを止めると言うけれど。
 私は貴方が、学生さんがいなくなったリビングで、なおもリビングのソファに頬杖をつきながら、猫のお腹を撫でながらゆったり煙をくゆらせている瞬間の絵が、堪らなく好き。うとうと眠りに落ちて行きそうで、時々ハッと気が付いたように研究の為のメモを書き留めて。反対の手にはパイプ。膝に猫。貴方の頭の中に、貴方の愛する研究。なんて文学的情緒のある生活なんでしょう。けれど、変わらない瞬間など無いのだから。貴方が子供が好きな事は知っているから。
「アヤ、ほら」
 貴方が見せたのは、銀行の口座明細。前に私が、貯金がいっぱいになるまで子供は作らない、と言った。私の僅かな時間稼ぎは、本当に僅かで終わった。
 ねぇ、稚拙な私の時間稼ぎなんて、頭の良い貴方には事も無いのかしら。偉大な偉大な大教授の貴方には。
 世界に変わらない瞬間など無いけれど、私はまだ、貴方のパイプの煙を隣で見ていたい。
 けど、ねぇ、世界で一番素敵な貴方。貴方と私の子供は、どんなに素敵になるかしら。パイプをくゆらせている貴方の仕草より、どんなにか素敵になるのでしょう。
「言っちゃ何だが、良いのか?」
「ええ、約束ですから」
 ねぇ、貴方が子供が大好きだって知っているから。世界に変わらない瞬間なんて無いけれど、変わった後が最悪なんて保証も無いのでしょう。
 ねぇ、世界で一番素敵な貴方。変わった後にも、きっと貴方は、世界で一番素敵な瞬間を私に見せてくれるって信じてるから。
 きっとね。

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