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森のフォーラム

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Re:短編小説
美里
[ID:want2love]

『at dawn』

いつだったかの昼ドラの再放送を終えて、私は遠い目で天井に馳せた。白い壁紙が、バルコニーへ繋がる窓から注す夕日に染められる。
空の色に影響され変色した薄い雲が、あの人のタバコの煙を彷彿させて、目に染みた。
なんだか身体を動かす気も失せて、ソファーに頬を押し付けながら昼ドラを反すう。重力が更に増した。

いつもそう、あの人が帰ってこないと生きた心地がしない。
目を閉じれば、数日前の微笑み。瞼の裏の闇だけで生きていけたら、どれだけ楽だろうか。

空が色を移しながら夜を迎える。僅かに目頭を湿らせて、私は西日を濁らせる。
夜は私を現実に戻していくのかな。

目を閉じて、私は日没を受け入れようとした。あの人がまた来てくれる日まで眠っていたくて。



「起きてる…?」

愛しい声が響いて夢から覚めた。前髪を撫でるあの人の吐息…そして唇に点火。温度を取り戻した私、傍らにあの人。

「今日は家に帰るんじゃなかったの…?」

突然の訪問に、頭が回らない。本能的に戸惑いと涙を隠した。

私の立ち位置は『落ち着く逃げ道』だ。私から求めてはいけないし、求められたら笑顔で抱擁を受け止める。
それなのに、今日は無理そうだ。こんなにも愛おしい、こんなにも欲しい。

「そんな顔しないで」

滅多にないけど、私が情緒不安定になるとゆっくりと髪を撫でて瞳を覗き込む。今日はそれが耐えられなくて、私は自分から胸に顔を埋めた。呼吸法を間違えてしまえば窒息してしまいそうな状況に、どうしていつもこんなにタイミングよく来れるのだろう。

「寂しかった?いつも一人にしてごめんね」

その言葉の意味に「これからも」、が含まれているのを知ってるのに、私はやっぱり離れられないよ。

「ごめんなさい…」

「え?」

どうしたの、と覗き込もうと動く身体を制して、胸にしがみついた。泣いているのは悟られているけど、どうしてもそんな姿を見せてはいけない気がした。

「愛してるの…」


出会うのがもう少し早ければとか、1番になりたいとか言わないから。

太陽が完全に沈んで、夜を迎えた。照明一つついていないこの部屋で、見えるのは曖昧な境界線と沈黙色に彩られた雰囲気だけ。
呼吸音が聞けるだけでいい。欲張りはいけないとも自分に言い聞かせられる。

返事はいらない。だからお願い、この時間をこれからも、私から奪わないで…

戸惑う気配を感じながらも、それでもいいんだって笑った。
困惑の表情を見せながらも笑うのを見て、それが私がいる証拠なのだと、合理化してみせたから。


*fin*

ちょっと遠回りな話でした。
前回の女性サイドです。日付的には数日後。
長くて申し訳ないです。スペースありがとうございました。

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