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森のフォーラム

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Re:短編小説

[ID:19881212]
 繰り返し、音がする。
 何度も、何度も、何度も。
 乾いた盤面を叩く、指の旋律。無機質なもののはずなのに、それが立てる音はまるで生きているかのようだ。緩やかに続くかと思えば、時折乱雑になったり、急ぎ足で駆け抜けたりと音色を変える。
 不意に、音が止んだ。
 なんだか不思議な気分になって振り返れば、仕事を終えたらしい同僚が調度席を立つところだった。パソコン画面が、薄暗い室内を照らしている。
「なんだ、藤原。まだ残ってたんだ。」
黒髪短髪長身眼鏡の色男。
言い寄ってくる女は星の数。
同期入社の営業部チーフ、瀬木遼平(せきりょうへい)。
 今は白のワイシャツを腕まくりし、紺地のストライプのネクタイといういでたちだ。残業中のサラリーマン以外の何者でもないが、なぜだかその様すら絵になるのがむかついた。
 どんなにかっこ良くて、モテても、私にとっては仕事のライバルだから。
 好きになんてならない。
 心臓が早いのだって、疲れてるせいだし。
 顔が熱いのだって、冷房が足りないから。
 だから、社内に2人きりだって問題ない。
 私は、わざとパソコン画面に向き直ってキーボードを叩きながら答えた。
「明日までに仕上げないといけない企画書があるの。瀬木こそ、遅くまで働きすぎよ。今日は不特定多数の彼女とデートじゃないの?」
少しの嫌味を込めた言葉に、瀬木はまるで気にしないように答える。
「俺は悪くねぇよ。向こうが無理やりちょっかい掛けてくるんだ。断っても断ってもしつこくて困ってる。」
「ふーん…。」
わざと気のない返事をしてみせる。瀬木のことを狙ってる女の子が多いことなんて、みんなお互いにわかってる。競争率が激しければ激しいほど、女のモーションは熱くなるのだから仕方ない。ある意味、瀬木も被害者らしい。
「だから、仕事してんだよ。気が紛れるし。家帰っても、電話がうるさいだけだから…それより、藤原ソレ何の奴?」
瀬木は、私のパソコン画面を覗き込む。
な、なんか顔が近いんですけど。
「新しく設計する駅前ビルのテナント会議用。」
「クライアントは?」
「ラクリスコーポレーション。」
答えた私の顔をじっとみて、瀬木は言った。
「俺、こないだ此処と取引したから概略わかるし手伝うからさ…20分で片付けるぞ。」
「えっ…?」
突然言われて困惑する私の隣に、瀬木は椅子と書類を持ってきて腰掛ける。笑顔で片目を瞑って、
「だから、そのあと一杯付き合えよ。愚痴とか話そうぜ『部長』。」
そう言う瀬木に、私は半眼になって言った。
「上司にタメ口使う部下なんていないわよ。」
 鼓動が自然と早くなるのには、気づかぬ振りをして。

 夜は、まだ長い。









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何も決めずに書き始めたら、いつの間にかオフィスラヴになってしまいました…。つーか、主人公名前出てないし。一人称と三人称混ざってるし。謎な作品。

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