弐の書院

□小鬼
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師走 二十四日 亥の刻

家族が揃って居間につく。それは、誰にとっても温かい、そして落ち着ける安らぎの時間だろう。俺にとっても、その筈だった。しかし、何故か締め付けられる。孤独を感じる。焦りが出る。


だって俺は、俺だけは








五尺二寸だから。







小さい。


いつでも家族の笑い者さ。

五尺四寸以下は家族の中では俺だけ。



今日だって喧嘩して、身長を馬鹿にされて、笑われて。もう辛いよ。



あぁ、何なんだろうね。



泣こうなんて思わないのに、心臓が痛くて、目が熱くなる。








― 「お前恐い。小さいのに何でそんな無駄に力あるんだよ!?」

僕そんな力ないだろ。


「何でそんな小せェん?(笑」

知らんわ。


「何で大きくなれないの?」

僕だって大きくなりたいわ!




「あの子はどうして大きくなれないの?この家にうまれてきたのに、あの子だけ小さいままなの?
男の子だからもっと大きくならないかしら。」


…母上……。

母が父と話していた。夜、僕達が寝た後のことだ。喉が渇き起きてみれば、まだ灯りがあったので、聴いてしまった。



僕の周りには大きい奴等しかいないのか。五尺五寸、七寸?六尺?


僕にはおよぶ訳がなくて。


また、孤独が僕を襲う。―




俺は、小さいが故ナメられる。
俺は、力があるが故恐れられる。

辛いんだ。小さいと蔑まれるのが。恐いと避けられるのが。


俺は孤独になる。







届かない。足掻いても。

もどかしい。夢。




もう少し、大きかったら。


ねぇ、俺があと少し大きかったら、俺はお前を胸で受け止められたのかな?格好良く抱き締められたのかな?




こんな小さくて、孤独で、惨めな俺をお前はどう思う?

加減が出来ないかもしれない。恐れられるかもしれない。




俺の周りには大きい奴等しかいないのか。


締め付けられる。孤独を感じる。焦りが出る。



届かない夢。


もどかしい思い。


俺を苦しませる、しかしそれでも何時も言われる、俺の代名詞。











「お前ホント鬼だな。」







― 小鬼 ―

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