時雨夢

□輪廻の奈落
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広がる曇天、赤黒い血、何か転がっていると思ったら大量の兵士達。

戦。

争いの絶えない世。


ただ槍を振り回す。


返り血を浴びる。


声を上げて、戦場を駆け抜ける。


快感。


喧嘩が、戦が、殺し合いがこんなに愉しいなんて。

気持ち良すぎる。





風は吹く。雲間から光は覗く。


ハァ…ハァ……。

戦い抜いたんだ。俺。勝っちまったんだ。無意味な戦争に。

無意味?

違うだろう。戦は生きることなんだ。

この世じゃ、それが当たり前。

生きるかてなんだ。飯を食い、眠り、そして戦。



さあ、行こうか。楽しもう。挑め、己の限界に。








神は…………………。



俺は神に負けた。滅法強い、この世にゃ敵無しとうたわれたはずだろう?



俺は間違っていたのか?


神よ………、俺は…。

俺は神に逆らった。

まだここにいたい。戦しか興味がない。目的を失うのが恐いんだ。

繰り返す殺戮。修羅の世。



「貴様を、人間道へと送る。」



「…………………ッ!?」

俺は息を詰まらせた、神の言葉に。


「…ッ、ちょっと待ってくれよッ!俺は!!……クッ。」


力む拳。気が付けば、声を張り上げ怒鳴っていた。


「修羅道だッ!!」

訴えることしか出来なかった。


「いや、人間道だ。」

それでも冷たくあしらわれる。目に、雰囲気に、圧倒される。押し潰されそうなくらい。



「……………クソッ…。」
どうすることも出来ない己が堪らなく、悔しい。







俺は神に逆らった。
だから罪を償う。



『人間道』 それは、第五の世。
『修羅道』 それは、第四の世。


本来、人間道の方が上なんだ。

俺は罪を犯した。

それでも上に上げたのは、上の界にて罪を償う為。





俺はこの上ない程、喧嘩が好きだ。だが、いまの俺の身体は脆すぎて、力も出せない。

戦が出来ない世界へ飛ばされた。


目的を失った。


生きる?

わからない。でもやるしかないんだ。




せいぜい苦しめ?

あぁ、やってやるさ。俺の命も魂も俺のものだ。
今更死なんざァ、恐くはない。

さぁ、おっ始めようか。


戦は終わらないぜ?

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