翌日、腹痛を乗り越え爽やかな朝を迎えたトバゴのもとに、ふたたび手紙がやってきた。差出人はホグワーツ魔法魔術学校。持ってきたのは郵便屋ではなくフクロウだった。 朝日を背中に浴びてやってきた白いフクロウはトバゴの腕に留まり、古めかしい手紙を差し出した。トバゴが無視していると手紙を地面に落として、さっさと腕から離れていく。フクロウの羽ばたきを聞くともなしに聞きながらトバゴは手紙を拾い上げた。 家に戻り封を開いた。文面は前回と同じだったが、この手紙が最後通達であることが末尾に付け足されている。畑の肥料にしようと手紙をばらしかけて、ふと昨日の強盗が頭をよぎった。 トバゴは便箋を裏返し、費用の詳細を求む旨を木炭で書き記して、元どおり封筒に入れた。 フクロウを探して家の裏手に回ると、ちょうど鶏に殺されかけているところだった。柵から救い出し手紙を持たせる。フクロウは高く上って旋回し、トバゴの頭に糞を落とした。 数日後、フクロウが携えてきた返信の内容は以下のようなものだった。 ――学費について、経済的に困窮する家庭には特別の措置がとられ、優秀な成績を収めた生徒の一部には奨学金や学費の免除が認められる。借用金に関しては卒業後最長三十年をかけて返済すること。 このことを強盗家族に知らせてやろうと思ったが、あいにく所在を知らなかった。男が脱ぎ捨てていった服をあさるも野菜の屑しか出てこない。諦め、焚き木の燃料にしようと服を破りかけたところで、裾の署名に気が付いた。ご丁寧に住所氏名がはっきりと刺繍されている。 トバゴは費用についての手紙をそのままフクロウに持たせ、男の住所を教えた。フクロウはトバゴの目を苛立たしげに突いて飛び立っていった。 二日後、フクロウが感謝の手紙とともに戻ってきた。 なかなか帰ろうとしないフクロウが裏庭の鶏と和解しはじめたころ、新たな茶色のフクロウがトバゴの家にやってきた。威嚇しあうフクロウたちを無視してトバゴは手紙を読んだ。 ――学費の詳細を希望せられたとのことだが、入学届いまだ届かず。至急連絡されたし。 木炭を手に取って、トバゴは便箋の裏に用件を書いた。 ――入院は希望しない。 返事を出してすぐ、数時間後には茶色のフクロウが戻ってきた。 ――ホグワーツ魔法魔術学校は病院ではなく教育機関であることご了解願いたい。それで入学を希望するか否か至急連絡求む。 トバゴはふたたび木炭を取った。 ――入院は希望しない。 ――病院ではないことご理解いただきたい。説明を希望するなら使いを出すが、どうか。 ――理解も何もねーよ。 ――なぜか。 ――俺は頭がおかしいわけじゃない。 ――おいそれどういうことだよ。 ――悪いけど癲狂院の世話になるにはまだ早い。 ――だから病院じゃねーっつってんだろうが。 ――じゃあ何なんだよ。 ――学校だっつってんだろ。 ――何の? ――魔法魔術。 ――入院は希望しない。 ――ふざけんな。 |